行政書士と司法書士どっちがおすすめ?

法律系の士業資格の取得を検討している方から「司法書士と行政書士どちらがおすすめですか」と質問されることがあります。現役士業から見て行政書士と司法書士はどちらがおすすめなのでしょうか。

・行政書士と司法書士どちらがおすすめか・

・おすすめする理由について

現役士業がよくある質問に回答します。また、おすすめする理由を現在の仕事状況や実体験も含めて説明します。

行政書士と司法書士はどっちがおすすめ?【結論】

行政書士と司法書士はどちらも代表的な法律系の士業資格です。

取得するならどちらがおすすめなのでしょうか。

私個人としては行政書士がおすすめです。

行政書士をおすすめすることには理由があります。

行政書士と司法書士の違いとは

行政書士の取得をおすすめする理由についてお話する前に、行政書士と司法書士の違いについて簡単に説明します。

行政書士と司法書士は共に法律系の士業として知られています。同じグループの資格ともいえる2つの士業ですが、資格の特徴や仕事内容はかなり違っているため注意してください。

結論としては「行政書士がおすすめ」でしたが、司法書士の資格内容に惹かれる場合や関連業務の経験がある場合、司法書士の業務の方が自分に合っていると感じる場合はこの限りではありません。

どちらの士業資格を取得するか迷っているなら「行政書士がおすすめ」ですが、「司法書士の資格に惹かれている」「司法書士の業務内容で仕事をしたい」という場合は司法書士に挑戦した方が良いでしょう。

行政書士と司法書士には次のような違いがあります。

行政書士とは

行政書士とは「行政に提出する書類」の専門家です。行政に提出する書類の作成や提出の代行などを行うのが

行政書士になります。行政の書類を扱うからこそ資格の名前が「行政書士」になっているわけです。

行政書士は行政の認可や許可に関するさまざまな書類を扱いますが、身近なところでは婚姻届けや車庫証明などがあります。この他にも助成金や補助金などの申請代行を行うこともあります。私も行政書士ですが、こういった助成金や補助金関係の業務はよく行います。

行政書士によって「相続や離婚関係の書類まで幅広く仕事をしている」というタイプや「補助金や助成金を中心にやっている」というタイプまでさまざまですが、行政の書類に特化しているのが行政書士という資格です。

司法書士とは

司法書士とは法務局で行う登記の専門家です。不動産の名義変更や抵当権設定、抵当権抹消、会社の設立登記など、さまざまな登記とその付随業務を行うのが司法書士という資格になります。

司法書士の業務について分かりやすい例を挙げるとしたら相続登記でしょうか。相続の際は被相続人から相続人に不動産の名義を変更します。亡くなった父親名義の実家を相続人である息子名義に変更する、という感じです。相続登記は個人でもできますが、書類集めが大変な上に法律や手続きの知識が必要になります。こんなときに登記手続きを代行するのが司法書士です。

行政書士は行政に提出する文書のプロ。司法書士は登記のプロ。同じ「書士」であり法律系の士業資格ですが、専門にしている分野がかなり違います。

「司法書士と行政書士どちらに挑戦すべき?」と悩んだら、まずはこの違いに注目し「どちらが自分向きだろう」と考えてみることもひとつの方法です。考えた結果、取得した資格の結論が出るかもしれません。

行政書士をおすすめする5つの理由

行政書士をおすすめする理由は5つあります。

・行政書士は士業の中でも身近な資格だから

・行政書士は次の資格の足掛かりになるから

・行政書士は勉強する科目数が少ない

・難易度と合格率が司法書士より高いから

・行政書士は将来性があるから

5つの理由について順番に説明します。

行政書士は士業の中でも身近な資格である

司法書士は登記という手続きを扱います。一般的に、日常的に「よく登記します」という方は少数派ではないでしょうか。相続のときにはじめて登記が出てきて「登記? 何それ?」となる方も少なくありません。

登記は一般的な手続きとは言い難いはずです。司法書士が専門にする分野は身近とは言い難いわけです。また、身近な問題を相談する際に「じゃあ司法書士にしよう」という方は、親類や知人に司法書士のいる方ではないでしょうか。どちらかというと弁護士や行政書士が候補として浮かぶのではないでしょうか。

行政書士は街の法律家とも呼ばれる資格です。身近な法律家として困っている人の相談に乗ることも仕事のうちです。困ったことがあれば最初の窓口になることも多く、士業の中では身近な存在だと言えるでしょう。士業資格に挑戦する人にとっても「身近」「馴染みやすい」という点は重要ではないでしょうか。

行政書士は次の資格の足掛かりになる

行政書士は他の資格の足掛かりになる資格でもあります。

たとえば、弁理士資格。弁理士は特許など知的財産権の専門家です。弁理士資格は行政書士資格と相性の良い資格のひとつです。

弁理士の仕事も行政の窓口に提出する特許関係の書類などを作成することや、手続きをすることです。行政という点で行政書士と弁理士は好相性になります。

また、弁理士の資格は行政書士を取得しておくことでショートカットできます。行政書士資格を取得しておくと弁理士試験の一部が免除になるという恩恵があるのです。

行政書士として仕事をしながら試験一部免除の恩恵を受けられる弁理士資格の勉強をして、将来的にダブルライセンスで仕事をするという方法もあります。行政書士と相性の良い資格はいろいろあるので、ダブルライセンスで仕事をしたいという方には特におすすめです。

行政書士は勉強する科目数が少ない

行政書士と司法書士では資格試験に必要な科目数が違います。

行政書士の方が科目数は少なくなっています。行政書士の科目数は8科目です。司法書士の科目数は11科目です。

【行政書士の科目】

基礎法学、憲法、行政法、民法、商法、政治経済社会、情報通信・個人情報保護、文章理解

【司法書士の科目】

憲法、民法、刑法、商法・会社法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法

行政書士の試験科目は法律系科目の他に一般的な知識も問われます。対して司法書士の試験は法律系科目ばかりです。初学者にとって行政書士は科目数が少なく、一般知識も問われることから、取り組みやすいと言えるでしょう。試験科目や試験内容から、行政書士の方がおすすめです。

難易度と合格率が司法書士より高い

行政書士の合格率は10~12%前後になっています。対して司法書士の合格率は4~5%前後になっています。

司法書士の方が勉強する科目が多いという話をしました。合格率という点でも行政書士の方がやや有利だと言えるでしょう。

勉強や試験の内容が違っているため単純に比較はできません。ですが、合格率で考えるなら、行政書士を優先した方が合格の可能性は高いとも考えられます。

行政書士は将来性がある

20~40代の若手によって行政書士は狙い目の資格です。

以前にこちらの記事でも書きましたが、行政書士は高齢層が多く若手が少ないという特徴があります。

行政書士は20~40代の若手に大チャンスである理由

行政書士はいろいろな仕事ができる資格でもあります。もちろん資格を取得しただけで稼げるわけではありませんが、工夫次第ではブルーオーシャンだと言えるでしょう。

最後に

行政書士と司法書士なら行政書士がおすすめです。

理由は科目の数や合格率、将来性などです。士業資格の取得を検討しているなら、まずは行政書士の取得を考えてはいかがでしょう。私も行政書士を取得し、現在は仕事の分野や方法を工夫して年収1,000万円以上を達成しています。年収についてはこちらに詳しく書いているので、ぜひご覧ください。

士業の仕事内容と年収は?現役行政書士が年収を開示

個人的に行政書士は仕事時間や仕事内容を工夫しやすく、FIREを達成しやすい仕事だとも思っています。ぜひ挑戦してみてください。