士業には、
・弁護士
・司法書士
・税理士
・行政書士
・弁理士
など、さまざまな種類があります。士業といえば「法律や税金系」という印象を持っている方も多いのではないでしょうか。
士業の中でも弁護士や税理士、行政書士、司法書士などは何となく「こんなときは弁護士?」という違いは分かるものの、混同されがちな士業です。私も行政書士として仕事をしていると「それは税理士の仕事ですね」「そちらは弁護士の管轄です」といった相談をされることがあります。
士業に相談するときは何かをお願いしたいとき、トラブルや手続きを解決したいときでしょうから、管轄の士業を間違えてしまうと時間ロスになってしまいます。そこで今回は、士業の中でも弁護士と税理士、行政書士の違いについて現役の行政書士が解説しますので、相談の際はぜひ参考にしてください。
なお、行政書士と司法書士の違いは別記事で解説しています。こちらも士業の使い分けに役立ちますので、併せて参考にしていただければと思います。
目次
行政書士・弁護士・税理士とは?
行政書士、弁護士、税理士は共に代表的な士業です。ただ、士業という共通点はありますが、仕事内容や範囲にはかなり違いがあります。
たとえば、税理士の職務範囲にある相談や依頼を行政書士にすると「すみませんが税理士に相談してください」という話になってしまいます。同じ士業でも職域や具体的な仕事内容はかなり違っています。具体的な違いに入る前に、まずは各士業資格について見て行きましょう。
行政書士とは
行政書士とは行政(官公庁など)に提出する書類や、官公庁など行政が関係する手続きのプロです。
たとえば、官公庁に提出する書類を作成したいとします。このようなケースでは行政書士に相談することが可能です。また、書類作成後に行政への提出や許認可の申請といった手続きを依頼できます。
行政書士は士業の中でも「行政に関わる書類の作成」「行政への申請・許認可手続き」のプロです。行政に関する書類のプロだからこそ行政書士という名前になっています。
弁護士とは
弁護士とは裁判所に関する手続きや法律全体の専門家です。行政書士とは法律の専門家という同じカテゴリに属していますが、専門分野が違っています。
弁護士は裁判所の訴訟や調停などの代理ができ、相続問題から刑事事件など法律の広い範囲をカバーしています。基本的には裁判所が関与する手続きや、法的なトラブルについての相談を仕事にしています。
行政書士とは法律に関わる士業という点では同じですが、仕事内容を比較するとかなり違っている印象があるのではないでしょうか。
税理士とは
税理士は税金の専門家です。たとえば、税金や節税について教えて欲しいとします。このようなケースでは税理士が管轄になります。税金に関する相談の他に税金の申告や書類作成、税務調査への対応を依頼することも可能です。士業の中でも税金全般の専門家が税理士になります。法律グループの士業である行政書士や弁護士と比較してください。
行政書士・弁護士・税理士の違い
資格について簡単に説明しました。説明の時点で「同じ士業でもかなり違う」という印象を持つのではないでしょうか。
行政書士・弁護士・税理士への依頼や相談についてもう少し具体的に違いを説明します。
作成する書類や提出先の違い
行政書士は行政に提出する文書作成のプロですが、弁護士や税理士が文書作成しないわけではありません。むしろ、弁護士や税理士も文書を作成する機会の多い士業だと言えるでしょう。ただ、提出先や作成する文書が行政書士とは異なっているのです。
まず税理士ですが、税理士は税金のプロであり、税の申告といった税金の手続き代理などが主な仕事になります。そのため、作成する文書も基本的に税金に関するものです。確定申告の書類やその他、税金の手続きに必要になる文書などは税理士が作成します。行政書士も行政に提出する書類を作成しますが、税理士は行政の中でも税務署・国税庁に提出する税金関係の書類をよく作成するという点で行政書士とは違いがあります。
弁護士もよく書類の作成を行いますが、弁護士の場合は裁判所などに提出する書類作成が多いと言えるでしょう。裁判や調停など裁判所の法的な手続きに必要な書類を作ることも弁護士の仕事です。弁護士は行政に提出する書類の作成ですが、弁護士は主に裁判所に提出する書類を作成するという違いがあります(他の書類作成をしないとは言いませんが)。
各士業は自分の職域に関する書類を作成するので、行政書士・弁護士・税理士では職域が異なりますから、主に作成する書類も違ってくるというわけです。
関りのある官公庁や窓口の違い
行政書士・税理士・弁護士では仕事上でよく足を運ぶ窓口、つまり馴染みの窓口が違っています。
弁護士は裁判所の手続きに多くこなします。そのため、第一に裁判所の窓口によく足を運ぶ士業です。裁判所の訴訟や調停などの手続きをするために必要書類を裁判所窓口に提出するわけですね。調査などのために自治体や官公庁の窓口に足を運ぶことももちろんありますが、弁護士と言えばやはり裁判所の窓口でしょう。
税理士は税金関係の手続きをよく行うため、税務署の窓口がよく足を運ぶ窓口になります。この他、自治体の税金関係の窓口などでしょうか。弁護士と同じで他の窓口に足を運ばないわけではないのですが、税理士と言えばやはり税務署です。
行政書士は自治体などの行政窓口によく足を運びます。許認可などの書類を提出しなければならないため、管轄の窓口によく足を運ぶというわけです。
弁護士・税理士・行政書士の仕事内容がよく分からないときは、「よく足を運ぶ窓口」から考えてみると、各士業の仕事内容や職域を理解しやすいかもしれません。
関与する手続きの違い
行政書士や税理士、弁護士は関与する手続きも異なります。
たとえば税理士。税理士は税の申告や税務署類の作成、税金関係の相談に関する専門資格です。この他には、税務調査への対応なども税理士の仕事になります。税務調査とは読んで字のごとくで、税務署がフリーランスや個人事業主、自営業、会社などに「税の申告漏れはないか」「税金の申告はしっかりしているか」調査にやって来ることを言います。
税務調査は特に申告漏れや申告ミスなどがなくても、法人であれば100分の3の確率、個人であれば100分の1の確率で行われると言われています。抜き打ちテストのようなものです(事前に「やります」という通知はあるのですが)。
税務調査の際は税理士に対応をお願いすることが可能です。税務調査の書類や質問などのサポートをしてくれるわけですね。これも立派な税理士の仕事です。税務調査の手続きや対応に関しては、弁護士や行政書士が関与したという話を聞かないのではないでしょうか。税金に関しての対応や書類作成、諸手続きは基本的に税理士なので、行政書士や弁護士とは関与する手続きが違っています。
弁護士は裁判所の訴訟や調停といった手続きによく関与しますが、行政書士がこういった手続きに関与という話は聞かないことでしょう。裁判所でトラブルの解決となれば基本的に弁護士なので、行政書士は基本的に管轄外なのです。いわゆる弁護士は「法廷に立てる」というやつです。
最後に
行政書士・弁護士・税理士は同じ士業という括りですが、
・仕事の範囲や内容が違う
・関与する手続きが違う
・馴染みのある窓口が違う
という特徴があります。
弁護士・税理士・行政書士への相談で迷ったら「この資格は仕事のためにどこに足を運ぶだろう」と想像してみると分かりやすいはずです。