個人事業主、フリーランスが経費にできるもの

個人事業主は経費を計上できる決まりになっています。

たとえば売上が1,000万円でそのまま税金がかかる場合と、経費が700万円ある場合では税金額はかなり違ってきます。この場合は経費を計上すれば税金の元になる金額が300万円です。1,000万円への課税と300万円への課税では、後者の方が明らかに税金額は小さくなります。

税金負担を軽くするためにも、かかった経費はしっかりと計上する。

これは個人事業主/フリーランスによって大切なことです。

ただ、経費を計上するとしても「どのような支出が経費になるのか」に悩む方は少なくありません。特に行政書士など自分で資格を取って独立開業した方は、独立当初のあたりで「経費とは?」と悩むことになります。支出は多いのですが、果たしてその支出を経費に計上しても良いのか判断に迷うわけですね。

この記事では個人事業主/フリーランスが経費にできるものを解説します。行政書士を例にたとえ話をしながら説明しますので、経費について見直ししたい方や独立間もない方はぜひ参考にしてください。

個人事業主/フリーランスの経費とは

個人事業主/フリーランスの経費とは「仕事に関する支出」のことです。

たとえば行政書士の売上が1,000万円だった場合、その1,000万円を稼ぐために道具の購入や外出、サービスの利用などが必要だったはずです。

仕事の利益を出すために必要だった出費を無視して課税すると「出費と課税でマイナスになってしまった」「売上が1,000万円なのに経費が800万円。ここに多額の税金をかけられたら、フリーランス個人事業主をしていることでかえって赤字を背負うことになる」という結果になることでしょう。こんなことにならないように、個人事業主/フリーランスは売上から経費をマイナスできる仕組みです。

仮に経費をマイナスした場合としない場合、どのくらい税金が変わってくるか見てみましょう。

■売上1,000万円で経費700万円の場合

白色申告では税金・保険料は約71万円

青色申告では税金・保険料は約52万円

■売上1,000万円で経費300万円の場合

白色申告では税金・保険料は約221万円

青色申告では税金・保険料は約196万円

■売上1,000万円で経費0円の場合

白色申告では税金・保険料は約345万円

青色申告では税金・保険料は約317万円

売上1,000万円の行政書士にどれくらいの税金・保険料がかかるのか試算しました。税金の計算では、この他に控除なども考えなければならないため、試算はあくまで経費のみで計算した場合です。実際の税金・保険料とはズレが生じますので注意してください。

ただ、こうやって経費と売上を比較してみると、経費を多く計上しているひと税金・保険料が少なくなっていることが分かるはずです。

経費計上は基本的な節税方法である

経費をしっかり計上することで税金の負担が軽くなるため、経費計上は基本的な節税方法です。

だからといって何でも経費にできるわけではありません。税金を安くしたいために経費以外を計上するのはNGです。ただ、逆に考えると、仕事の経費であればいくらでも計上できます。

フリーランス/個人事業主が節税したいなら「何でも計上するのはNG。ただし経費はしっかり計上する」が基本です。

経費にできるのは仕事に関する支出

フリーランス/個人事業主が経費にできるのは仕事に関する支出です。

たとえば、仕事で東京に出張したとします。東京への出張は仕事がなければ発生しませんでした。東京出張への交通費や宿泊費、取引先の接待費などは仕事に関係がありますので経費に計上できます。

ただし、東京で何となく買った漫画雑誌は仕事と関係があるわけではありませんから、基本的に経費に計上できません。ただ、その漫画雑誌が取引先との話に必要で、仕事のために買ったのであれば経費に計上できる余地はあります。

経費に関しては法律で具体的に決まっているわけではないため「仕事がなければ発生しなかった出費」「仕事に関係する出費」「その出費がなければ仕事ができなかった」などの関連付けがあれば、基本的に経費に計上することが可能です。

個人事業主/フリーランスの経費一覧

個人事業主/フリーランスが経費に計上できる主な支出は次の通りです。

消耗品の購入費

仕事に使う機材や機器の購入費用

宣伝広告の費用

交通費

出張時の宿泊費

荷物の発送や梱包の費用

事務所の光熱費

電話やネットの通信費

修繕費

接待交際費

損害保険料

減価償却費

福利厚生費

給料賃金

外注工賃

地代や家賃

仕事に使う書籍の購入代

雑費             など

ここに挙げた経費は代表的なものです。

経費の基本は「仕事に関係のある出費」ですから、この他にも仕事に関する費用が発生すれば経費に計上できる可能性があります。なお、経費にできるか解釈に困る出費があれば、税理士などに確認を取ることをおすすめします。

ここからはフリーランス/個人事業主の経費の中でも代表的なものを、行政書士をたとえ話に順番に説明して行きます。

消耗品・機器などの購入代金

行政書士の仕事をするために印刷機を購入しました。また、行政書士の仕事用にパソコンや液晶、マウスなどの機器も導入しました。仕事に使う機器の購入費用は代表的な経費です。

この他に、行政書士の仕事中に使う筆記用具やメモ用紙、コピーのときに使うコピー用紙なども購入しました。これらは消耗品なので定期的に新しいものを購入しなければいけません。コピー用紙やメモ帳といった消耗品の購入費用なども経費です。

交通費・旅費

行政書士の仕事で官公庁の窓口に行かなければいけませんでした。外出には公共交通機関であるバスを利用しました。仕事で外出する際にかかる公共交通機関の費用も経費です。仮に自家用車で仕事のための外出をしたとしても、ガソリン代を経費に計上できます。

この他に、仕事に必要だった出張時の旅費なども経費として計上可能です。出張時の交通費や宿泊代なども基本的な経費ですが、飲食代が経費になるかどうかはケースによります。

宣伝費用

行政書士になっても待っているだけで仕事が舞い込むわけではありません。稼ぐためには自分から積極的に宣伝広告しなければならないのです。

光熱費や家賃

行政書士の事務所で発生する家賃や光熱費も経費です。

たとえば、アパートの一室を借りて行政書士の仕事をしていたとします。この部屋は仕事だけのものであり、住居は別にありました。このようなケースでは家賃や光熱費は仕事のための支出ですから、経費に計上可能です。

なお、自宅で行政書士の仕事をしている場合は私生活の場であり職場でもありますから、家賃などを按分して経費計上することが可能です。

通信料

電話やネットなどの通信費も代表的な経費だと言えるでしょう。個人的に楽しむためのネットや電話などは経費として計上できませんが、仕事に使う分は経費にできます。

ネットに関しては基本的なネット契約の他に各種サービスなどと契約している方も少なくないはずです。仕事に使うネット系サービスであれば、同様に経費に計上できます。

たとえば、行政書士として仕事をしていて、ネットの保守サービスに入っていたとします。このようなケースでは保守サービスの費用も経費にできるわけです。

書籍代

仕事に関係のある書籍代であれば経費にできます。

たとえば、行政書士が仕事中に使う専門書を購入したとします。専門書は仕事に使うわけですから、仕事に関係のある支出です。よって、経費に計上することが可能です。

ただし、仕事と関係のない出費を経費にはできません。自分が楽しむために購入する書籍については経費計上の対象外です。

最後に

個人事業主/フリーランスの節税方法として経費計上は最たるものです。

経費を多く計上できれば税金が減りますし、経費が少なくなると税金が増えます。税金と経費の関係は極めてシンプルです。経費は忘れずに計上することが重要になります。

ただ、すべての支出を経費にするわけにはいきません。仕事に関係のない出費は経費にならないので注意してください。経費にできるかどうかは判断がややこしいところもあるので「仕事に関係のある出費であれば基本的には経費」という基本からスタートすると良いでしょう。

なお、経費は証明のための領収書などが必要です。経費を忘れずに計上する際の資料にもなります。経費とセットで領収書などの証拠を用意するという考え方を養っておくことが重要です。