行政書士が廃止になるって本当?司法書士との統合の噂について現役士業が解説

ネット上には「行政書士が廃止になるらしい」「司法書士との統合が検討されている」などの噂が飛び交っています。

2025年に入って出てきた噂 行政書士廃止 は本当なのでしょうか。これから行政書士を受験したいと考えている方や、2025年の試験を視野に行政書士の試験勉強を続けてきた方にとっては、廃止の噂は由々しき事態です。

行政書士という資格が廃止になるらしいという噂は本当なのかどうかを、現役の行政書士が解説します。

ネット上に飛び交う行政書士関連の噂で不安になっている方に、現在の状況や真実をお話しします。

行政書士が廃止になるという噂はうそ

ネット上で飛び交っている「行政書士が廃止される」「行政書士という資格が変わってしまう」という噂ですが、これは完全な嘘です。行政書士がなくなる予定はありません。また、行政書士という資格が変わってしまう予定もありません。

行政書士が廃止されるって本当?

この疑問に対する回答は「完全なウソ」です。

司法書士と統合されるという噂も当然うそ

ネット上には「行政書士は司法書士と統合されるらしい」という噂もあります。

これについても完全なウソ。現状、行政書士が司法書士に統合される予定はありませんし、行政書士と司法書士を統合した新しい資格ができる予定もありません。

ネット上にある「士業が変わるらしいよ」「行政書士がなくなるらしいよ」「士業が統合されるらしいよ」といった系統の噂はすべてウソですので、安心してください。そのような予定はまったくありません。

行政書士が廃止される!という噂の出処はどこ?

行政書士が廃止されることは今のところありません。

ただ、かつて「行政書士による書類作成業務独占の廃止」が話し合われたことがあるため、以降、定期的に「また議論が出てきて廃止が検討されるのではないか」「他の士業との統合が検討されるのではないか」という噂が出てきます。

日本行政書士政治連盟のホームページを見てみると、平成9年のところに記録が残っています。

https://www.gyoseiren.jp/about4.html

行政書士に限らず、さまざまな資格は職域や資格内容の見直しが行われることがあります。

また、その資格に関して議論になることも少なくないため、行政書士に関してこうした話し合いや議論が出てくることは、何も珍しいことではありません。他の資格に関してもよくあることです。

ただ、すでにお話ししたように、行政書士自体がなくなる予定も、現状の資格内容が変更される予定もありません。司法書士と統合される予定もありませんので、行政書士を目指す方は「あくまで噂」「何も変わらないのだ」と安心て資格試験を受けてください。

行政書士が廃止されない根拠となる7つの理由

そもそも、行政書士がそう簡単になくなるはずがありません。

行政書士の廃止や統合を否定する根拠となる7つの理由について説明します。

理由①政府や関連団体に統廃合の動きはないから

行政書士は知名度の高い国家資格です。政府や特定の団体が行政書士の統廃合を検討しているなら、間違いなく議論や発案の段階で大ニュースになります。ネットももっと大騒ぎになることでしょう。

今のところ、そういった大騒ぎはなく、政府や関連団体も何も発表していません。過去の行政書士関連の議論を取り上げて一部の人が「行政書士が廃止になるかも」と憶測で話をしているだけです。

政府や関連団体に司法書士廃止や他の資格との統合の動きは一切ありません。

理由②行政書士は国家資格だから

行政書士は国家資格です。国が認めている専門性の高い資格だからこそ、そう簡単になくなるとは考えられません。

民間の趣味の人たちが作ったような資格であれば「本日限りで終了です」ということもありかもしれません。行政書士に関しては幅広い専門的な業務を扱える資格ですので、ある日突然「なくなります」とはいきません。社会が混乱してしまいます。専門性の高い国家資格という点で、そう簡単にはなくせないと考えられます。

理由③行政書士の業務範囲は幅広いから

行政書士の業務範囲は広く、司法書士など他の国家資格とは業務範囲に違いがあります。

行政書士の主な業務範囲は次の通りです。

  • 官公庁に提出する書類の作成
  • 権利義務に関する書類の作成
  • 書類に作成に関わる相談
  • 書類の提出
  • その他

https://www.gyosei.or.jp/info/service

一言に「官公庁に提出する」といっても、日本には官公庁がかなりの数・種類あります。それらに提出する書類に関わる相談業務や代理業務の行政書士の仕事です。行政書士はかなり職域が広いことから、特定の業務に特化している行政書士や、特に特定の業務のみ行っている行政書士も少なくありません。

たとえば私の場合は補助金や助成金の申請などをメインの業務のひとつにしています。これだけでも相当忙しいです。たったひとつの業務にかかりきりになってしまうわけです。また、この業務だけで食べて行けるくらいは稼いでいるので、このひとつの業務だけでかなりの依頼数になります。

行政書士だけでこれだけ業務の幅が広く、仕事の数があるのですから、それを他の業務範囲を持つ司法書士などと統合することは考えられません。

理由④行政書士の業務は拡大傾向にあるから

ただでさえ広い行政書士の業務範囲ですが、この業務範囲はさらに拡大傾向にあります。

まず、行政書士は官公庁の手続きに関する書類を作成できる資格ですので、官公庁が新しい制度や手続きを作ると自然と業務範囲が広がります。また、行政書士は聴聞又は弁明の機会の付与等に係わる行為や行政不服申立て手続きの代理(一部は特定行政書士の仕事)なども業務になったため、定期的に業務を増やされている状況です。

とりあえず行政に関する各種の手続きで誰がやるのか決まっていない仕事や、一般の人が難しい手続きなどは「行政書士に投げておけ」という感じです。

このように行政書士は廃止になるどころか、じわじわと業務範囲が広くなっている状況です。行政書士をなくすとそれこそこういった手続きを「誰がやるのか」「代わりの資格をいちいち作らなければならない」となってしまうため、資格の廃止はまずあり得ません。

仮に司法書士と統合という話になっても、司法書士とは業務範囲がまったく違いますから、必要な知識自体が違います。また、司法書士と行政書士を統合することで、業務範囲がさらに広くなってしまうため、同じ士業であっても司法書士など他の資格と統合はまず無理だと言えるでしょう。

行政書士は今後も業務範囲を広げられる可能性はあっても、資格の廃止は考えられません。

理由⑤社会に必要とされているから

行政書士が廃止されると、行政書士が対応していた業務をやる人がいなくなります。

たとえば補助金や助成金の申請の場合、行政書士に依頼せず、必要書類の準備から提出までご自身で行うと、簡単なものでも数日くらいは余裕でかかります。

加えて、一般の方が窓口で一発OKで受理してもらえることは、ほとんどありません。ミスの訂正を指摘され、差し戻しになることも多いと言えるでしょう。

差し戻しがあれば修正し、再度提出という流れです。基本的にはこれを何度も繰り返します。この一連の流れを自分でやるのは時間的にも労力的にも厳しいと言えます。行政書士に依頼すれば、こういった一連の流れを丸ごとやってくれます。

こういった社会の面倒な手続きや書類作成、対応をまとめて引き受ける行政書士は社会に必要とされる存在です。面倒な手続きがあふれる日本において、面倒なところをやってくれる存在である行政書士の廃止はまず考えられません。

理由⑥行政書士資格の廃止や統合で多くの人や社会に影響が出るから

官公庁の手続きという面倒なところをやってくれる行政書士だからこそ、廃止にすると社会に多大な影響が出ます。

会社やお店が補助金や助成金を申請できない、あるいは申請できても手間や時間がかかり過ぎる。個人で官公庁に面倒な書類を提出しようと思っても、難しくて作れない。作る度に差し戻しになり、手続き自体を放置する。仕事を休んで手続きのために時間を作らなければならない。

このような不便さや面倒さから、行政書士がいないと、おそらく世の中の人や会社などからクレームが多々出ます。「大変」「面倒」「手続きが分からない」があふれてしまうことでしょう。

面倒なところをやってくれる資格でなくすと社会的な影響が大きいからこそ、廃止や統廃合はできないと考えていいでしょう。

理由⑦行政書士には長い歴史があるから

行政書士は100年以上の歴史を持つ資格です。

行政書士の前身は1872年の代書人制度です。役場などに代理で書類を提出する人である代書人にルールをもうけ、国家資格というかたちにしたのが行政書士になります。

行政書士は長い歴史を持ち、その中で社会の人たちの「行政手続きが面倒」「官公庁の書類がよく分からない」「代わりにやって欲しい」に対応し続けてきた資格なのです。

これだけ歴史があり、さらにその歴史の中で業務範囲を増やし続け、今日に続いているわけですから、そう簡単になくなるはずがありません。

https://www.gyosei.or.jp/info

行政書士が廃止になるって本当?司法書士との統合の噂について|まとめ

行政書士関連で何か劇的な動きがあれば間違いなく大ニュースになります。それこそニュース媒体のトップニュースになるようなレベルです。行政書士資格が「廃止になるかも?」「何か変わるかも」と不安なら、ニュースをしっかりチェックしておくことをおすすめします。

今のところ行政書士が廃止になるような理由はなく、私自身も「仕事がない」と困ることはありません。ですから、噂について特に心配する必要はないと感じています。過去の「行政書士による書類作成業務独占の廃止」などを掘り返した上での噂です。それ以上でも、それ以下でもありません。

行政書士に関しては過去の議論から定期的にこうした噂が出てきますが、廃止や統合は現状まずありませんので、気にしないでください。