私は行政書士として仕事をしていますので、よく「士業でもっと稼ぐには?」といった士業の仕事関係の質問をいただくことがあります。その中でいただいたことがあるのが、
士業に語学は必要?
英語を勉強した方がいい?
という質問です。
士業に語学は必要なのでしょうか?
現役の行政書士に語学力が必要かどうかや、士業が英語を勉強するメリットなどを解説します。
また、士業がやるべき事(やった方がいい事)なども解説します。
目次
士業に英語などの語学力は必要か?
結論から言うと「士業をやるために語学力は必要ありません」。
私や知人の士業などは特に英語ぺらぺらというわけでもありませんし、そこまで語学の勉強に力を入れているわけではありません。しかし、士業としてしっかり稼げていますので、特に問題ない状況です。士業に英語などの語学力は必要ないという結論になります。
ただ、一部の士業の仕事には語学力が必要になる他、士業が英語を勉強することにはメリットがあります。
語学力が重要になる主な士業は弁理士や弁護士などです。
海外の国々やクライアントと仕事をする弁護士の場合、基本的には英語などの語学力が重要になります。
国内だけで日本語話者のみをクライアントにしている弁護士の場合は、特に英語を学ぶ必要はないかと思います。また、弁理士は特許に関する士業ですが、特許などの権利は英語が関わってくることも少なくありません。仕事のために英文を読むことも多いと言えます。そのため、弁理士に関しては英語がある程度必要と考えた方がいいかもしれません。
ただ、司法書士や行政書士、国内のみのクライアント・案件に対応する弁護士などは基本的にそこまで英語が必要になるわけではありません。
士業が英語など語学力を磨くメリット
士業として仕事をするためには、基本的に英語などの語学は特に必要ありません。
ただ、英語ができると仕事の幅が広がるというメリットがあります。この他にも士業が語学を学ぶことにはメリットがありますので、「より仕事の幅を広げていきたい」という方の場合は英語を勉強してもいいかもしれません。
士業が英語など語学力を磨くメリットは次の通りです。
英語の契約書作成や翻訳などができる
英語などの語学を磨くことで、英語が必要な仕事にも携われるようになります。
たとえば行政書士の場合、英語の知識が必要な契約書の作成や、契約書の翻訳などができるようになります。
日本人が海外でビジネスをしたいとき、英語の契約書は不可欠です。
ただ、海外でのビジネスを希望している方が英語を熟知しているケースは少ないと言えます。また、仮に英語ができても、契約書のチェックや作成に必要な法律の知識があるとは限りません。法律を熟知している行政書士が英語を習得することで、英語を使った書類作成ができるようになるわけです。
さらに英語と法律を熟知している行政書士であれば、英語の契約書やビジネスに必要な書類を翻訳できるようになります。
ビジネスの契約では契約内容のチェックは重要事です。英語と法律を熟知した行政書士であれば、こうした業務にも携われる点がメリットです。
外国人をターゲットに仕事ができる
日本には多くの外国人がやってきます。
中には「日本で起業したい」という外国人もいますので、英語ができればこうした外国人をターゲットに仕事ができるというメリットがあります。
たとえば、外国人の起業支援。
外国人が日本にやって来て「ビジネスをはじめたい」と思っても、言語の壁がある他、法律や手続きの違いがあります。そのため、「まず何をすべきか分からない」「融資を受けたいがどうすればいいのか分からない」「どのような手続きが必要なのか?」と困ってしまうことが多いのです。
英語のできる士業であれば、英語・日本語両方で起業サポートできます。もちろん、必要な手続きなどについても英語で説明できます。
英語を習得することで外国人の起業関係のサポート業務もできるわけです。
ダブルライセンスで仕事やダブルワークができる
英語を習得することで、英語が必要な別の資格を取得することも可能です。
たとえば行政書士が英語を習得した場合、英語をよく使う資格である弁理士を取得して行政書士兼弁理士として働くこともできます。
また、行政書士だからといって必ず士業系の資格を目指す必要はありません。まったく関係のない資格を目指すことも可能です。医学系の勉強をして医学英語の試験を取るという道もありますし、翻訳や通訳の方向に行くこともできるはずです。
https://plaza.umin.ac.jp/jasmee/ieiken/2025_34.html
https://www.jnto.go.jp/projects/visitor-support/interpreter-guide-exams/
行政書士などの士業が英語を習得することで、ダブルライセンス(トリプル以上も可能)で仕事ができる。英語を活かしてダブルワークができる。このようなメリットがあります。
英語を習得することで年収もアップする可能性がある
英語を使えるようになると仕事の幅が広がりますし、語学力を活かしたダブルワークやダブルライセンスでの仕事ができます。結果的に年収が増える可能性が高いというメリットがあります。
ただ、これはあくまで現在の行政書士の仕事と上手く両立できた場合で、かつ、仕事に活かせるくらいの英語力があった場合です。英語を使った仕事に手を出した結果、「かえって本業の方であまり仕事ができなくなってしまった」ということであれば、年収が下がってしまう可能性があります。
年収がアップするのは、本業もこなしつつ、仕事で活用できるレベルで英語が使える場合だと考えた方が良いのでしょう。英語力アップで年収アップも期待できますが、ハードルはなかなか高いと言えます。
他の行政書士との違いをアピール(宣伝)できる
行政書士などの士業が英語を習得することで「英語で対応可能です」「英語の契約書に対応できます」など、英語に対応できる点をアピールできます。
クライアントの中には「英語ができれば有難い」という層も一定数いますので、そういった層・クライアントへのアピールならびに宣伝になります。
他の士業との違いとして「語学に担当であること」をアピールすることも可能です。
英語で仕事ができるようになるまでに必要な勉強時間
英語を仕事や日常に活かせるようになるまでどのくらいの労力・時間が必要かというと、1日1時間の勉強で約6年はかかると言われています。
合計時間で言うと、約2,200時間です。
法律初心者が行政書士の資格を取得するために必要になる勉強時間の目安は800時間~1,000時間になっています。
司法書士試験の合格に必要な勉強時間の目安は3,000時間です。弁理士の合格に必要な勉強時間の目安は2,000時間~3,000時間になります。
ある程度英語を話せる人、読める人なら別ですが、英語を日常レベル・仕事レベルで使えるようになるためには、士業資格をひとつ取得するくらいの猛勉強が必要だということです。
さらに、日常会話や仕事でちょっと使えるレベルの英語は別物です。英語の契約書をチェックするくらいのビジネス・法律の専門的な英語力を磨くとすると、さらに時間がかかると言えるでしょう。
独立開業可能なファイナンシャルプランナー1級の平均的な勉強時間は400時間~600時間ほどです。同じく独立開業できる海事代理士の試験勉強の目安は500時間ほどになっています。
日常会話・仕事会話がぺらぺらできるくらいの英語の勉強時間が約2,200時間であると考えれば、独立開業できる資格試験をいくつか取得するくらいの時間が必要であると言えるでしょう。
英語の習得に必要な平均的な学習時間と主な国家資格(独立開業可能なもの)を比較しました。
資格試験・勉強内容 | 合格や一定レベルになるために必要な勉強時間の目安比較 |
日常・仕事で会話できるレベルの英語 | 2,200時間 |
行政書士 | 800~1,000時間 |
司法書士 | 3,000時間 |
弁理士 | 2,000~3,000時間 |
FP1級 | 400~600時間 |
海事代理士 | 500時間 |
司法試験 | 3,000~8,000時間 |
語学以外に士業がやるべきおすすめの事とは?
士業が年収を増やしたい、アピールポイントを増やしたい、別の資格や分野でも仕事をしたいときなどに語学の習得は有効です。ただ、士業が年収を増やしたい、仕事を増やしたいといった場合、別の方法も考えられます。
英語などの語学以外に士業がやるべきおすすめの事は3つあります。
- SNSやダイレクトメールなど宣伝に力を入れる
- 同じ系統の資格を取得して仕事の幅を広げる
- 仕事上の人脈づくりをする
① SNSやダイレクトメールなど宣伝に力を入れる
年収を増やしたい。仕事を増やしたい。
こんなふうに考えているなら、SNSやダイレクトメールなど集客に力を入れてみてはいかがでしょう。
語学を磨くことには確かにメリットがありますし、仕事の幅を広げることに繋がります。
ただ、実践レベルの英語力を養いためには、かなりの労力と時間が必要です。
単純に年収や仕事を増やしたいなら、いきなり語学の勉強に行くのではなく、まずは集客に力を入れる方法を試してみてもいいのではないでしょうか。
当ホームページでは、行政書士である私が実際に使った効果的だった方法をご紹介しています。
ぜひ参考にしていただければと思います。
② 同じ系統の資格を取得して仕事の幅を広げる
語学と同じく「勉強しなければならない」という点は同じですが、他の資格を取得して仕事の幅を広げたり、年収を増やしたりといった方法も考えられます。
たとえば行政書士の場合、すでに法律の土台があるわけですから、司法書士や弁理士などを目指してもいいでしょう。銀行とのやり取りの経験を活かしてファイナンシャルプランナーなどに挑戦してもいいかもしれません。
仕事や日常でぺらぺら英語を話せるようになるまで2,200時間はかかるわけですから、同じくらい時間がかかる資格を取得する、あるいは2,200時間を目安にいろいろな資格を取得するという方法もありますので、「英語を頑張ってみようかな」という方はよく考えてみてはいかがでしょう。
③ 仕事上の人脈づくりをする
収入を増やしたい、仕事を増やしたい。こんな思いから「語学を頑張ってみようかな」と思っている方は、まずは仕事上の人脈づくりの工夫をしてみてはいかがでしょう。
仕事上の人脈が広くなれば、その人脈から紹介で仕事を受けることも多くなります。
実際私も、集客と人脈づくりに力を入れた結果、行政書士の売上がかなり伸びました。仮に私が「英語で仕事の幅を広げよう」「収入を増やそう」と思って語学を頑張っていたら、ここまで短期間で売上が伸びることはなかったと思います(あくまで私の場合は、ですが)
人脈を広げるおすすめの方法は別記事にまとめました。
士業に語学力は必要か?英語を勉強するメリットや士業がやるべき事|まとめ
行政書士など士業に語学は必要かどうかを解説しました。
行政書士としている私個人の意見としては、
- 日本人だけをターゲットにしている
- 集客や人脈作りで十分な仕事を得られている
ということであれば、特に「必要ない」と思っています。
英語ができなくても稼げている士業はたくさんいますので、いきなり語学に走るよりは集客や人脈作りを頑張ることや、ダブルワーク・ダブルライセンスが狙える資格取得を狙うのがおすすめです。
いずれにしろ、何が必要かを選択するのはご自身です。
英語をビジネスに活かしたい、外国人もターゲットに仕事をしていきたいと思っているなら、語学を磨いてもいいのではないかと思います。