仕事を順調にこなしているように見えても、メンタルにダメージを受けていることがあります。いわゆる「自分では心が疲れていることに気づかないパターン」です。
仕事が順調なときは特に「仕事が上手く行っているから」で、心や体の不調に気づかないことがあるのです。仕事が順調だからこそ、心や体も順調だと誤認するケースがあります。仕事が順調なときこそ「心が疲れているのではないか」「元気だと誤認しているのではないか」と考え、メンタルチェックをしてみてはいかがでしょう。
この記事では、
・仕事が順調なのに心が疲れているときの特徴
・心が元気だと誤認してダメージを放置するリスク
・仕事が順調なときに実施したいメンタルチェック
・個人事業主/フリーランスのメンタルケアの方法
などについて解説します。
会社員は会社の方でメンタルケアをしてくれたり、相談窓口を設けてくれたりしているケースも少なくありません。対して個人事業主/フリーランスは、自分のメンタルケアも自分で行わなければいけません。個人事業主/フリーランスにとって、メンタルチェックやメンタルケアも仕事の一貫だと言えるでしょう。
メンタルチェックやメンタルケアの方法についても解説しますので、ご自身の心の健康を保つための参考にしてください。
目次
仕事が順調なのに心が疲れているときの特徴
仕事が順調でも知らず知らずのうちにメンタルにダメージが蓄積していることがあります。
仕事では成果が出ていても心が疲れている場合やダメージが蓄積している場合は次のような特徴が見られることがあります。心当たりのある個人事業主/フリーランスはメンタルチェックを実施するか、念のために専門家のカウンセリングを受けることをおすすめします。また、少なからず自覚がある場合は、自分のメンタルケアについて検討することも重要です。
睡眠時間が短い、あるいは極端に長い
仕事が順調で「明日頑張ろう」「今日も頑張った」と満足して就寝する。しかし、実際に眠ると短時間ですぐに目が覚めてしまう。仕事を頑張って疲れているはずなのに、なかなか眠れない。このような特徴に心当たりはありませんか?
仕事を頑張っても短時間睡眠になってしまう場合は、なかなか眠れないような場合はメンタルのダメージや昂ぶりが原因になっていることがあります。自分では仕事の状況に満足していても、心にダメージが蓄積しているわけです。
反対に、一度眠るとなかなか起きられないような場合も心や体の疲労やダメージを疑った方がいいでしょう。
久しぶりに体重をはかったら体重が減っていた
仕事が順調だと心や体も順調であると誤認していることがあります。そして、あるときふっと、体に違和感を覚えることがあるのです。よくあるのは「知らない間に体重が減っていた」といった違和感です。
仕事に打ち込んでいると、知らず知らずのうちに心に疲労が蓄積し、衣食住を「面倒だ」「後回しでいい」と考えてしまうことがあります。結果、心身共に不健康な状態が続いてしまい、体重という数字に表れるわけです。
反対に体重がかなりのペースで増えている場合も注意が必要になります。メンタルの不健康さが体重の増加というかたちで現れている可能性があるからです。
やる気が起きないが無理やり仕事をやっている
仕事が順調だと「今日も頑張ろう」「この調子で行こう」と思う方が多いかもしれません。しかし、頑張ろう、この調子で行こうという言葉で、「疲れた」「休みたい」「やりたくない」という気持ちを押し殺していないでしょうか。ふとした瞬間に「疲れたな」と思ってしまうことはありませんか?
やる気が起きない。「頑張ろう」という気持ちで「疲れた」「やりたくない」を押し殺している。これは、あまり健全とは言えない状態ではないでしょうか。体が疲れているときに、疲労状態を見て見ぬふりをしているのと同じです。
やる気の裏に「疲れた」「休みたい」という気持ちが隠れていないか、今一度考えてみましょう。
小さなミスをすることが多くなっている
仕事が順調でも小さなミスを連発することがあります。たとえば「書類の置き場所を忘れてしまった」「ミーティングの時間を間違えてしまった」「ふっと居眠りをしてしまった」など、大きな仕事上のトラブルには繋がらなくても、些細なミスが連続して起こることがあります。
こうしたミスが連続して発生するときは、体に疲労が溜まっている可能性がある他、メンタル面にダメージや疲労が蓄積している可能性も考えられるのです。
仕事自体は上手く行っていても、仕事のプロセスにミスが増えていないか確認してみましょう。
新しい物事に挑戦する気が起きない
心が元気な状態だと、新しい資格試験への挑戦やビジネスチャンス、仕事を効率化する新しいやり方などに対しても「やってみよう」と思うことでしょう。しかし、心が疲れてダメージを負っている状態だと、新しい物事に対して意欲が湧くどころか、面倒に感じてしまったり、チャンスだと分かっていても一歩踏み出せなかったりします。
体が疲れているときは、新しい物事に挑戦する気が起きません。心がダメージを負っているときや、疲労が溜まっているときも同じです。
新しい物事に対する意欲はあるか。「やりたい」「やった方がいい」と思っても、やる気が出てこないか。近況についてあらためて考えてみてください。
仕事に対して強迫観念のようなものがある
個人事業主/フリーランスは、基本的に仕事をすればするほど収入・売り上げがアップします。また、バリバリ仕事をしていると、取引先から「よくやってくれている」「今後もお願いしたい」と信頼を得られ、新たなビジネスチャンスを得られる可能性も高くなると言えるでしょう。
仕事をやればやるほど売上・収入・仕事がより良い状況になる。無理してでも仕事をやり続けることが重要である。個人事業主/フリーランスがこのように考えてしまうのも、仕方のないことかもしれません。そのため「仕事をやり続けなければ」「結果を出し続けなければ」という強迫観念に囚われることがあります。
仕事に対して強迫観念が強い場合、心に大きなストレスがかかっていると考えられます。仕事が順調でもメンタルが壊れやすくなっている状態だと言えるでしょう。
休みを取ることに抵抗がある
仕事の調子が良いと「このままのペースで仕事を続けたい」と思ってしまうものです。そしてつい、自分のメンタルケアをおろそかにしてしまうのです。さらに、仕事の調子が良いと、「今休むと、別の人に仕事を取られるかもしれない」「仕事の重要なところを任せてもらえないかもしれない」「仕事の勢いが落ちてしまう」などと考え、休みを取ることに抵抗感が生まれてしまいます。
仕事が順調で休みを取ることに抵抗感がある場合は、メンタルの不調を疑った方が良いかもしれません。「まだできる」「まだ仕事をしたい」このような考えが出てくる時点で、自分の心のダメージや疲労を疑うことも重要です。
周囲から話し方や振る舞いが変わったと言われる
自分では変わっていないと思っていても、周囲から「話し方が変わった」「以前と振る舞いが変わった」と言われることはないでしょうか。メンタルのダメージは言葉遣いや話し方、振る舞いに知らず知らずのうちに出てしまうことがあります。
家族や友人など周囲の人にこれらを指摘された場合、自分の心が疲弊している、ダメージが蓄積している可能性を考えた方がいいかもしれません。
ちょっとしたことで落ち込みや苛立ちを感じる
仕事が立て込んでいないときには気にしないようなことで落ち込みや苛立ちを感じてしまう場合、原因としてメンタルのダメージや疲労が考えられます。
人間、体が弱っているときは、ちょっとしたことで体調を悪くしてしまうものです。心も同じで、自分では弱っていることに気づかない場合でも、ちょっとしたことがさらなるダメージに繋がってしまうわけです。
気持ちのアップダウンが激しくなっていないか。ちょっとしたことで落ち込みや苛立ちを感じていないか。心の寛容さが失われていないか。自分のここ最近の心の状態について振り返ってみましょう。
普段当たり前のようにできることができない
仕事が順調でもメンタルにダメージが蓄積しているときは、普段当たり前のようにできていることができなくなってしまいます。
たとえば、心が元気なときは楽しみなはずの食事も「面倒だな」と感じてしまうようなケースがあります。この他に、家事や趣味に関しても「やりたいけどできない」「どうしても気が進まない」となってしまうことがあるのです。
体が疲れているときは、家事や趣味に対しても「疲れているからできない」と感じることでしょう。心も同じで、疲れているときやダメージを受けているときは、体が元気でも「できない」「面倒」となってしまうわけです。
普段当たり前のようにできていることを面倒に感じていないか、できない状態になっていないか、考えてみてください。
心が元気だと誤認してダメージを放置するリスク
仕事が順調だから心も健康である。このように誤診してさまざまなメンタルの不調に際に見られる特徴(危険信号)を見逃してしまうと、メンタルの不調がさら深刻化するリスクがあります。
・順調だった仕事が次第に不調になったり、やる気をなくしたりする
・うつ病など深刻な心の不調に陥ってしまう
・心が疲れているために新しい物事に挑戦できないなど、ビジネスチャンスを逃してしまう
個人事業主/フリーランスのメンタルの不調が放置により深刻化すると、最悪の場合は仕事自体を継続できない可能性があります。
肉体は休息を取らず走り続けることはできません。心も同じで、ケアなしで走り続けることはできないのです。個人事業主/フリーランスは不調で休むと収入に直結します。だからこそ、肉体だけでなくメンタルの状態にも気を配るべきです。
仕事が順調なときに実施したいメンタルチェック
仕事が順調なときも心には疲労やダメージが蓄積されます。仕事が順調なために、心の疲労やダメージに気づかないだけだと言えます。仕事が順調なときは、休憩時間などに念のためにメンタルのセルフチェックをしてみてはいかがでしょう。
自分のメンタルチェックはネットでも簡単にできます。
いくつか使いやすいセルフチェックをご紹介します。
https://kokoro.mhlw.go.jp/check/
https://www.mhlw.go.jp/content/001084057.pdf
https://www.jes.ne.jp/self-check/stress.html
これらはサラリーマンなど会社勤めの方を対象にしたメンタルチェック方法になります。ただ、個人事業主/フリーランスも工夫すれば使えるメンタルチェック方法でもあります。
たとえば、職場の人間関係や上司について問われた場合は「取引先」などと読み替えてください。勤務時間に対しても個人事業主/フリーランスの仕事時間と読み替えることが可能です。
適宜読み替えを行い、現在のメンタルの状況をチェックしてみてください。
個人事業主/フリーランスのメンタルケアの方法
個人事業主/フリーランスができるメンタルケア方法は5つあります。
メンタルチェックをしてみて「仕事は順調だが心が疲れているかもしれない」と感じたら、次のような方法を試してみてはいかがでしょう。
メンタルを回復させるために仕事を休む
メンタルにダメージがあるときは無理に仕事をせず、仕事を休むこともケア方法のひとつです。心身をしっかり休ませれば、知らず知らずのうちに蓄積された心の疲れやダメージも改善することでしょう。体に疲れがたまっているときに休息で回復させることと同じです。
調子が良いと思っていても、疲労とダメージは溜まります。疲れやダメージを「ない」と誤認していることも多いので、仕事中に無理にでも休息時間を取るようにしましょう。また、「〇日に1回は仕事が好調でも心身を休ませるために休日を作る」など、自分でメンタルケアのための工夫をすることも重要です。
仕事をやり過ぎないことも「仕事だ」と考える
仕事を休むことに抵抗があるなら、「休んで心を回復させることも仕事だ」と考えてはいかがでしょう。休んだ方が心身も回復し、より仕事を効率的かつミスなくこなせるはずです。現状の力を十分発揮するためにも、仕事を休むことも仕事と考え、定期的に休息・休日を取るようにしましょう。
カレンダーなどに強制的に「この日は休み」と丸を付けておき、その日に合わせて仕事のペースを調節することなども方法のひとつです。
無理やり仕事ができない状況に身を置く
メンタルチェックで心に不調を抱えている可能性が分かっても、どうしても仕事を続けてしまう方は少なくありません。自分では仕事を休めない場合は、無理やり仕事ができない状況に身を置いてはいかがでしょう。
たとえば近場の温泉宿に無理やり予約を入れ、その日は一日温泉でゆっくり休息を取るわけです。自分を「休まなければならない」「他にやることがない」「仕事ができない」状況に置き、心身を休める方法があります。
あらためて衣食住を見直す
メンタルの状態が悪いときに衣食住のバランスが崩れていると、不調に拍車をかけます。また、衣食住の乱れがメンタルの疲れやダメージを引き起こすこともあります。寝食がしっかりしていないと体が弱ってしまい、病気になりやすいことと同じです。
あらためて食事の時間や頻度、バランスなどを見直してみましょう。睡眠時間は足りているかなど、衣食住全体について考えてみることも重要です。
衣食住は心と体に直結します。バランスを見直すことで心や体のバランスも良い方向に向かうかもしれません。
心のプロにアドバイスを受ける
セルフチェックの結果が思わしくない場合はカウンセラーなどプロに相談することも方法のひとつです。
会社の場合は産業医や専門の窓口があります。個人事業主/フリーランスは会社に所属していませんから、会社の窓口や産業医に相談することはできません。
個人事業主/フリーランスの場合はトラブルへの対処や事務を効率化するため、弁護士や税理士などを顧問にしている方もいらっしゃることでしょう。メンタルヘルスのために、すぐに相談できるカウンセラーなどを見つけておいてはいかがでしょう。
プロに心の状態やメンタルケアについて、定期的にアドバイスを受けておくと安心です。
最後に|メンタルチェックとケアはこまめに行うことが重要
個人事業主/フリーランスは仕事の量が収入などに直結するため、ついやり過ぎてしまうところがあります。また、仕事が順調だと、「このまま頑張ろう」と寝食・休みを忘れて頑張ってしまう方も少なくありません。
個人事業主/フリーランスも仕事を続ければ、自分では順調だと思っていても、心にダメージや疲労が蓄積されてしまいます。メンタルの疲労・ダメージを放置すると、後から深刻なトラブルになりかねません。結果、仕事に大きな影響が出てしまっては本末転倒です。
今回の記事ではメンタルチェックの方法についてもご紹介しました。心が疲れているときやダメージを負っているときの特徴についてもお話ししましたので、一度、自分の状態を確認してみてはいかがでしょう。