私は行政書士として独立開業していますが、そうすると「自分も個人事業主として働きたい」という方からよく相談があります。相談内容としては以下の内容が多いです。
・個人事業主になるには資格が必要なのか?
・個人事業主と会社員は兼業できるか?
・個人事業主になるには手続きが必要なのか?
・個人事業主の具体的な始め方は?
・個人事業主として稼ぐコツは?
今回の記事では、個人事業主に関する基本的な質問に回答したいと思います。
会社員から個人事業主になりたい方や独立開業を考えている方は、ぜひこちらの記事で基本的なポイントをおさえていただければと思います。
目次
個人事業主とは?
個人事業主とは会社や事務所などの団体に所属せず、個人で仕事をしている人のことです。また、法人を設立せず個人として仕事をしている人も個人事業主になります。
個人事業主は特定の職種を指すわけではありません。
・行政書士として事務所に所属せず仕事をしている
・法人を設立せず、パソコンのスキルを活かして仕事をしている
・会社や事務所などに所属せず、個人でピアノを教えている
・法人を設立せず、所属せず、個人でライターをしている
これらはすべて個人事業主になります。
職種・業種に関係なく「会社や事務所の社員ではない」「法人を設立せず個人で仕事をしている」人は個人事業主に該当します。
また、個人事業主として生計を立てているかも関係ありません。個人で仕事と収入を得ているのであれば、その売上・収入で生計を立てられているわけではなくても、個人事業主になります。
個人事業主を始めるために資格は必要か?
個人事業主を始めるためには特別な資格は必要ありません。個人事業主資格試験などという資格も存在しません。
個人で仕事を受けて収入を得ていれば、それはもう個人事業主です。ただ、個人事業主をやること自体に特別な資格は必要ありませんが、しておくべき手続きや、やっておいた方が良いことはあります。
・開業届の提出
・稼げるよう工夫すること
個人事業主には特別な資格は不要で、特に手続きをしなくてもできてしまいます。ただ、開業届の提出は基本的に「してください」というルールになっています。この開業届の手続きについては後の見出しで説明します。
なお、開業届を提出していなくても、個人事業主として稼ぐことは可能です。実際に個人事業主として稼ぐようになってから開業届を提出する方もいますので、開業届を提出しなければ個人事業主として活動できないわけではありません。
個人事業主と会社員は兼業できるか?
個人事業主と会社員(サラリーマン)は兼業可能です。実際にサラリーマンと個人事業主を兼業している方もいます。サラリーマンの副業として個人事業主を始める。個人事業主が軌道に乗るまでサラリーマンとして会社に勤める。このような働き方も可能になっています。
ただ、注意したいのは、勤め先の副業・兼業に対するスタンスです。勤め先によっては「兼業はやめて欲しい」「就業規則で副業を禁止している」といったケースもあります。公務員も原則的に副業は禁止されていますので、注意が必要です。サラリーマン・公務員などが就業規則やルールをチェックせずいきなり個人事業主を始めてしまうと、勤め先とトラブルになってしまう可能性もあります。
会社員などが個人事業主を始める場合は、まずは就業規則など勤め先のスタンスをチェックしておきましょう。兼業で働きたい方は、トラブル防止のためにもしっかり確認しておきましょう。
なお、サラリーマンとして働きながら個人事業主の準備を始めることは特に問題ありません。こちらはあくまで「将来的に個人事業主をやりたいので、準備をしているだけ」という話だからです。
個人事業主として異業種を兼業することも可能
個人事業主として複数の業種として仕事をすることも可能です。
たとえば、すでに個人事業主としてライターの仕事をしていたとします。後から行政書士の資格を取得したため、行政書士とライターの二足わらじで個人事業主をすることも可能です。
異業種と異業種を兼業する。複数の資格を使って稼ぐ。個人事業主として複数の仕事を掛け持ちすることは特に問題ありません。むしろ収入や仕事の幅を広げることに繋がると言えます。
個人事業主を始めるためには手続きが必要なのか?
個人事業主は「今日からはじめる」で、いきなりスタート可能です。
たとえばネット上には個人で仕事を受注できるサービスがありますので、そういったサイトを利用して仕事を受ければ「今日からすぐに個人事業主になる」といった働き方もできます。
すでにお話ししたように、個人事業主を始めるためには特別な資格は一切必要ありません。だからこそ、「今日から個人で仕事を受ければ個人事業主」も可能なわけです(実際に受注できるかは別問題ですが)。
なお、こちらについてもお話ししましたが、個人事業主を続ける場合は原則的に開業届を提出する必要があります。ただ、開業届は個人事業主を始める条件ではないため、未提出でも問題なく個人事業主を始められます。
個人事業主の具体的な始め方は?
個人事業主を始める際は「とりあえず今日から始める」でも問題ありません。特別な資格は不要なので、「始めたい」で始められるところが個人事業主の良いところでもあります。
ただ、個人事業主を始める際は、次の3つの準備をしておいた方が良いと言えます。
税務署に開業届を提出する
開業届が個人事業主を始めるための条件だと勘違いしている方もいらっしゃいますが、違います。個人事業主として仕事をする場合は「開業届を提出してください」というルールがあるだけで、開業届自体が条件というわけではありません。
開業届とは、税務署に「これから個人事業主として稼ぎます」という税務署への届け出(連絡)になります。会社員と個人事業主、法人では税金の徴収方法や計算などが違ってきます。そのため、「個人事業主として働いて税金の報告をし、税金の納付をします」と税務署に届け出ておくわけです。
個人事業主として仕事を受け始めた。個人事業主としてやって行きたい。このような状況であれば、税務署に開業届を提出しておきましょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
個人事業主としての方向性を決める
個人事業主としての方向性を事前準備として決めておくとスムーズです。
具体的には次のようなポイントを決めておくことをおすすめします。
・白色申告をするのか、それとも青色申告をするのか
・個人事業主として何を仕事にするのか
個人事業主の確定申告方法には「白色申告」と「青色申告」があります。何も手続きをしなければ自動的に白色申告になりますが、手続きをした場合は青色申告の利用が可能です。
青色申告には白色申告にはないメリットがあるため、節税したい個人事業主によく使われています。ただ、青色申告をしたからといって必ずお得になるとは断言できません。
青色申告は手間もかかるため、お得かどうかは個人事業主の考え方や売上の状況などのケースバイケースになります。「白色申告をしておいて、売上の状況を見て青色申告の手続きをする」など、申告方法の方向性を決めておきましょう。
個人事業主として何を仕事にするかも重要です。たとえば今まで金融系の仕事をしていたので、「今までの経験を活かそう」と考えました。ただ、金融系の仕事にもいろいろあります。業種も窓口や営業、システムなどいろいろですよね。今までシステムとして仕事をしていたのであれば、「経験を活かしてシステムの保守系の仕事をする」など、方向を決めるわけです。
個人事業主の仕事もさまざまですから、早めに方向性を決めておくとスムーズです。
機器など必要な道具があればそろえておく
個人事業主として仕事をする際に必要になる道具は業種によります。
ただ、ネットでやり取りするケースも多いため、パソコンなどの機器を準備しておくと便利です。ライターや資格を使って書類を作成する仕事などは、そもそもパソコンがないと仕事ができないケースも少なくありません。
私用のパソコンを持っている場合でも、情報漏洩などのリスクがあるため、仕事用に準備しておくと安心です。
・個人事業主の仕事をするためにはどのような道具が必要か?
・必要になる道具をどのタイミングで準備するか?
ふたつのポイントについて考え、準備を進めておくことをおすすめします。
資格自体は必要ありませんが、個人事業主としてこれから稼ぐためには、ある程度の準備をしておくに越したことはありません。
個人事業主として稼ぐコツは?
個人事業主になったら「稼ぎたい」「売り上げを伸ばしたい」と思うことでしょう。
個人事業主になったからといっていきなり条件の良い仕事が舞い込むわけではありません。個人事業主として稼ぐためには自分なりに工夫する必要があります。
工夫の方法に正解はありません。業種によっても工夫の仕方は違ってきます。たとえば、以下のような方法が考えられます。
・資格試験を取って個人事業主としてできる仕事を増やす
・SNSなどでの宣伝広告に力を入れ、顧客をどんどん獲得する
・他の個人事業主がやっていない仕事をメインターゲットにする など
私は行政書士として自分で営業方法を工夫して仕事をしています。
実際にやってみて効果的だった方法をグログにまとめていますので、興味のある方は参考にしていただければと思います。
資格を取ることで稼ぎを増やす方法もおすすめ
個人事業主の稼ぎを増やす方法としておすすめなのが、士業などの資格を取る方法です。
独立開業できる資格を取れば働き方にも柔軟性が出ますし、仕事の範囲も広がります。また、個人事業主として資格を強みとして活かすことも可能です。
士業やファイナンシャルプランナーなど、「独立開業できる資格を持っている」という点は宣伝広告でもアピールできますので、個人事業主として働く前あるいは働きながらでも、資格試験の勉強をしてみてはいかがでしょう。
資格試験の取得を目指すのであれば、個人的には行政書士をおすすめします。行政書士をおすすめする理由は別の記事にまとめています。ぜひ挑戦してみてください。
最後に|個人事業主は今日からすぐ始められる
個人事業主になる場合、特に資格は必要ありません。今日から個人として仕事を受ければ個人事業主です。ただ、注意したいポイントがあります。
・サラリーマンなどと個人事業主を兼業する場合は就業規則を確認しておく
・個人事業主として仕事をするなら税務署に開業届を提出する
・個人事業主として稼ぐなら、確定申告の方法など今後の方向性を考えておく
・個人事業主として仕事をスタートする際に必要な道具などを準備しておく
・個人事業主として稼ぎたいなら行政書士など資格の取得も検討する
また、個人事業主を始めた当初は収入に波があることも少なくありません。サラリーマンと個人事業主を兼業することや、ある程度の生活費を準備しておくことなど、今後の収入や生活についても考えておいた方が良いと言えるでしょう。
個人事業主自体はすぐに始められますが、始めたとして「生活できるのか」「今後どうやって稼いでいくのか」「将来的にどうしたいのか(売上をどんどん増やしたい、など)」が問題になります。個人事業主を始める際はこういったポイントについてもよく考えておくことをおすすめします。