行政書士の仕事とは?できること・できないことを現役士業が解説

行政書士や弁護士、司法書士を「法律の仕事だから法律関係のことができる」とひとくくりにしている人は少なくありません。法律系の士業という印象はあっても、どこからどこまでがどの士業の管轄かを明確に理解しているケースは少ないかもしれないですね。

実際に行政書士の仕事をしていると「それは弁護士の管轄なので行政書士はできませんよ」「それは司法書士の得意分野ですね」という相談が舞い込むことがあります。もちろん、行政書士の仕事について説明し、しかるべき専門家のところで解決していただくよう促します。

行政書士は 町の法律家 という側面も持っていますから、総合病院の窓口で診療科を尋ねるように、気軽に相談するところがあるのかもしれないですね。

今回は現役行政書士が行政書士の仕事内容についてお話しします。士業の使い分けや、挑む資格を決めるときの参考資料としてぜひ活用してください。

行政書士は「行政に提出する書(書類)を作成する仕事」である

行政書士がどのような仕事をするのか分からないときは、行政書士という資格の名前に注目すると分かりやすいです。

たとえば弁護士の場合、裁判所で弁護を担当しますよね。皆さんも弁護士といえば裁判所での弁護活動といった光景を想像するのではないでしょうか。だからこそ弁護士です。

司法書士の場合、法務局(法律関係の手続きを司る官公庁)で登記や供託などの申請をおこないます。

学校の社会系の授業で司法は裁判所と習った人も多いかと思いますが、司法書士の司法は法務局・法務省と読み替えると理解しやすいはずです。法務局で管轄する登記や供託といった各種の手続きや申請、書類作成、相談などをおこなうので司法書士という名前になっています。

では、行政書士はどうなのか。

行政書士も資格の名前に仕事内容が隠れているのです。

行政書士は「行政手続きの申請や行政手続きにまつわる書類の作成」が主な仕事になります。だからこそ、資格の中に「行政」「文書(書)」などが入っているわけです。

ただ、これだけでは具体的にどのような手続きの申請や書類作成をするか分からないと思いますので、行政書士の仕事内容についてもう一歩踏み込んで説明します。

行政書士の仕事内容①書類作成業務

行政書士のメイン業務ともいえる仕事が書類作成業務です。

行政書士が作成できる行政・手続き関係の書類は1万種類もあると言われています。行政窓口でおこなう手続きの書類で困ったときに「分からないので作って欲しい」と相談を受け、手続き内容に合った書類を作成するのが行政書士の仕事です。

行政書士は仕事として次のような書類の作成が可能になっています。

・役所(自治体)や官公庁に提出する許認可等の申請書類の作成

・遺言書等の権利義務に関する書類

・事実証明のための書類

・契約書

多くの人にとって身近な行政書類・行政手続きに「車庫証明」があります。車を購入したときに遮光証明を管轄の窓口に提出しますよね。行政書士は仕事として車庫証明の書類を作成することが可能です。あとは、自治体や官公庁の窓口に提出するお店や会社の許認可などでしょうか。

たとえば飲食店をはじめるとします。飲食店をはじめる場合、ただお店を用意して料理を振る舞えばいいというわけではありませんよね。しかるべき窓口に書類を提出して手続きしなければいけませんよね。飲食店の許認可の手続き書類作成なども行政書士の仕事内容になります。

また、たとえば、相続のときに話し合って遺産分割について決めました。遺産分割について決めたら基本的に遺産分割協議としてまとめます。遺産分割協議書は個人で作ることもできますが、文書のプロである行政書士に依頼して作成することも可能です。

この他に行政書士は示談書、内容証明に告訴状、内容証明、始末書、陳情書、各種の契約書、図面や定款などを作成できます。

行政書士の仕事内容②手続き申請業務

行政書士の仕事内容のひとつに申請手続きの代理があります。

たとえば、行政窓口に提出する書類作成をしても「その書類を使って手続きすることが難しい」というケースは少なくありません。

行政の許認可などの申請手続きは、手続きのルールや法律を把握していない場合は難しいですよね。手続きに慣れていない場合も難しいはずです。お店を開くために手続きしたいときは、お店の開店準備に時間を割かなければいけませんから、時間的な問題で手続きが難しいかもしれません。

自分でできないときや難しいときは、行政書士が作成した書類を使って手続きの申請・代行をします。もちろん、書類作成だけ依頼しても問題ありません。また、書類は自分である程度準備して、手続きや難しいところは行政書士に依頼するということも可能です。

たとえば、飲食店を出すために許認可の手続きをしたいとします。飲食店の出店までにはたくさんの書類準備と手続きが必要ですよね。

行政書士の場合は書類作成と手続き代行・申請ともに仕事としてできますから、店主から「手続きと書類作成など準備をまとめてやって欲しい」と仕事を受けることも可能です。書類作成から手続きまでオールインワンでできるということですね。

店主から書類だけ受け取って手続き対応は行政書士の方でやることもできますし、手続きは自分でやりたいという場合は飲食店の許認可関係の手続きに必要な書類の準備サポートだけでもOKです。

行政書士が手続きを仕事として受けた場合は、担当窓口からの確認や問い合わせ、修正なども基本的に行政書士が対応します。

行政書士の仕事内容③相談業務

行政書士の仕事内容のひとつとして、仕事内容に関係する相談業務があります。

想像してみてください。行政書士だからといっていきなり「この書類の作成をお願いします」と細かな仕事内容を指定して依頼するでしょうか。多くの人は「この手続きをやりたいのですが・・・」「このような手続きをしたくて書類の準備をしたいのですが・・・」というところから入るのではないでしょうか。

行政書士は相談も仕事内容のひとつですから、書類作成や手続きにまつわる相談を受けて、適切な案内をしたり、書類作成や手続き申請に必要なアドバイスをしたりします。

また、仮に行政書士に仕事として書類作成や手続き申請を依頼する場合、行政書士側が事情を理解していないと仕事ができませんよね。遺産分割協議書の作成などは、話し合いの内容をヒアリングしなければ作成できません。手続きの申請・代行を受けるとしても、進め方を説明しなければならないケースは少なくありません。

行政書士は仕事内容として、書類作成や手続き申請・代行について相談を受けることも可能です。

最後に

行政書士の仕事内容についてお話ししました。

行政書士の仕事内容は「行政や個人にまつわる書類の作成」です。だからこそ行政(行政手続きにまつわる)書士(書類を作成する士業)という名前がついています。士業の中でも許認可や個人の権利義務に関する書類作成のエキスパートが行政書士なのです。

行政書士の主な仕事内容は3つです。

・行政にまつわる手続きや個人の権利義務などにまつわる書類の作成

・許認可などの手続きの申請や代理

・書類作成や手続き申請などの相談

以上が基本的な行政書士の仕事になります。司法書士は登記の専門家であり、法務局と関係の深い士業です。弁護士は行政書士と同じ士業ですが、裁判所や訴訟などと関係の深い士業になります。行政書士の主な仕事内容と比較してください。

行政書士と司法書士の詳しい違いについては別記事にまとめました。別の記事もチェックしていただければ、より行政書士の仕事への理解が深まると思います。