行政書士の仕事をしていると、
「行政書士の資格を取ろうと思っているのですが、自分は行政書士に向いているでしょうか?」
「法律の仕事に興味があるのですが、行政書士に向いているタイプの人っていますか?」
といった仕事以外の質問を受けることがあります。
これから資格を取得しようと思っている人や、法律の仕事に興味のある人、スキルアップを目指す人などは、自分に行政書士が向いているか気になるかもしれませんね。
そこで今回は、現役の行政書士が「行政書士に向いている人」について徹底解説します。資格取得や職業選択、スキルアップのときの参考にしてくださいね。
目次
行政書士がズバリ教える行政書士に向いている人とは?
行政書士は法律の仕事なので「法律好きな人が行政書士に向いている人ではないか」と思うかもしれません。実際はそうとも言い切れません。この理屈でいくと、お菓子が大好きでたまらない人がお菓子屋さん向きで、魚が好きで好きでたまらない人が漁師向きになってしまいます。
確かに自分の扱う商品や知識、仕事が好きで楽しみながらできることが一番かもしれませんが、それはあくまで「好きだったらいいよね」という話でしかありません。行政書士の場合は「法律が好きだったらいいよね」という話なので、法律好き=行政書士向きというわけではないのです。
行政書士の仕事をしていると、「仕事でしか法律に触れない」「別に法律が好きなわけではないが、仕事としてやっている」という人が同業者の中に少なくないことに気づきます。行政書士の仕事をしたり、資格を取ったりする上で「法律好きだったらいいよね」「より楽しく勉強や仕事ができるよね」というだけの話です。
では、どのような人が行政書士に向いている人なのか?
実務を経験している現役行政書士の視点では、次のような人が行政書士に向いている人だと感じています。
- 法律を大切にできる人
- 勉強が好きな人、あるいは仕事のためなら勉強できる人
- 責任感がある人
- 仕事上のルールをしっかり守れる人
- 地道な事務処理が苦にならない人
行政書士に向いている人①法律を大切にできる人
法律を大事にできる人は行政書士に向いています。法律が大好きである必要はありませんが、法律の仕事である以上、遵法精神は重要ですし、仕事道具として法律を大切にできることは重要だと感じます。
たとえば、行政書士が普段から「法律なんて気にするな」と法律違反ばかりしていたらどうでしょう。仕事人としての信頼を得ることは難しいはずです。
法律に関する仕事だからこそ、やはり背筋を正さなければいけません。信頼に関わりますからね。ですから、「人が見ていないからこのくらいズルしても大丈夫」「ルール違反くらい問題ないでしょう」という人は、あまり行政書士には向きません。
また、行政書士の仕事道具は法律ですから、法律を大切にできることは重要だと感じます。
料理人は調理道具を大切にしますよね。大工も自分の仕事道具は大切にするはずです。行政書士が実際に書類を作成するときはパソコンなどを使いますから「じゃあ、パソコンが仕事道具では?」と思うかもしれません。そう言われればその通りです。
ですが、行政書士の書類作成の基礎には法律があります。法律こそが仕事の土台になる仕事道具なわけです。そういった意味で、他の職業の人のように、自分の仕事道具を大切にできる人は行政書士に向いている人だと感じます。
行政書士に向いている人②勉強が好きな人、あるいは仕事のためなら勉強できる人
法律は一度決めたら変わらないわけではありません。法律改正によって変わってしまうことがあるのです。
法律改正で大きなニュースになったのは、2020年4月に施行された民法(債権関係)ではないでしょうか。債権関係の民法が改正されるのは121年ぶりなので大きなニュースになりました。郵便法が改正されて郵便サービスの内容が変更されたことも話題になりましたよね。
このように、法律は一度決めてもころころ変わってしまうのです。行政書士は法律を使って仕事をしますから、法律の改正に敏感でなければいけません。そして、常に勉強を続けなければならないのです。
また、行政書士は手続きに必要な書類を作成して管轄の窓口に提出することも仕事です(行政書士の仕事内容については別記事を読んでくださいね)。書類作成や提出のルールについても知らなければいけません。
行政書士は、資格を取ったらそこで終了、後はゆったり仕事ができるというわけではありません。意外と常に勉強に追われているのが行政書士なのです。よって、勉強が好きで続けられる人や、仕事のためなら勉強をしっかり続けられる人が向いている人になります。
勉強を続けることは、前の見出しでお話した仕事道具を大切にすることにもつながります。
改正された法律をろくに勉強していないということは、料理人でいえば包丁をろくに研いでいないことと同じです。古く使えない法律知識で仕事をするわけですから、お客さんにとってはたまったものではありません。
料理人が大切な仕事道具である包丁をこまめに研ぐように、「法律をこまめに研げる人」が行政書士に向いている人です。
行政書士に向いている人③責任感がある人
行政書士になくてはならないのが責任感です。
たとえば、ある行政書士がお客さんから「遺言書を作成したい」と相談されたとします。遺言書を作成するつもりで進めていましたが、仕事を引き受けた行政書士がいい加減で、遺言書の作成を投げっぱなしにしていました。理由は「好きな映画を一気見したかった」でもいいですし、「新作ゲームを急いでクリアしたかった」でもいいでしょう。単純に「いつでもいいやと思って怠けていた」という理由でもかまいません。そうこうしている間に、遺言書を作成したいと相談してきたお客さんが亡くなってしまいました。
遺言書を作成したいと相談してきたことには理由があったはずです。相続トラブルを回避したい。長男に不動産を相続させたかった。すでに親族の間でピリピリした不仲があり、相続を機に爆発することを避けたかった。いろいろな意図が想像できます。しかし、行政書士が責任を持って仕事をしなかったために、お客さんは目的を果たせず亡くなっていまいました。このようなケースは、決してあり得ないことではありません。
行政書士に相談にくる人たちは「手続きをしたい」「法律関係のことで困っている」「書類を作成したい」など、何らかの仕事を行政書士に任せたくてやって来ます。無責任な仕事をしてしまうと、その人たちの人生や生活に大きな影響をもたらすことになるのです。
お客さんに与えるマイナスを考えて、真面目に仕事ができる人は行政書士に向いている人です。
行政書士に向いている人④仕事上のルールをしっかり守れる人
行政書士の書類作成や申請手続きにはルールがあります。細かなルールを守れないと、根本的に仕事になりません。
たとえば、手続きの申請に使う書類に不備があったとします。窓口に提出したら「不備ですよ」と差し戻されてしまいました。行政書士の仕事は法律や手続きにまつわる厳格なものですから、「そこを何とかお願いします」と頭を下げても官公庁の窓口は「仕方ないですね」と受理することはありません。「駄目です」で終了です。行政書士の仕事はマイルールで進めてはいけないということです。手続きのルールに合わせる必要があります。
自分のルールを通したい人や、細かな決まりごとが苦手という人は、あまり行政書士には向いていないかもしれません。反対に、進める手続きに沿った細かなルールをしっかり守れる人は行政書士に向いている人です。
行政書士に向いている人⑤地道な事務処理が苦にならない人
行政書士など士業の仕事は「華々しい」「カッコいい」という印象を持っている人が少なくないようです。海外のスーツを着た士業のドラマは生活も仕事ぶりもセレブリティですよね(ドラマは士業と言っても弁護士なのでちょっとちがいますが・・・)。
行政書士試験に合格するとバッチをもらえますから、バッチを見て「カッコいいですね!」と言う人は少なからずいます。ですが、実際の仕事はバッチのようにピカピカしたしたものでもなく、ドラマのようにキラキラしたものでもありません。ひたすら地道な書類仕事です。行政書士の仕事は文書の作成や手続きの代理、手続きや文書作成の相談を受けることが主だからです。
行政書士は、日によっては一日中パソコンに向かって書類を作っていることもあります。想像以上に地味で地道な仕事なのです。この地味で地道な仕事に耐えられるかが行政書士への向き不向きを決めるといっても過言ではありません。
たとえば、「製造のような同じことの繰り返しは無理」という人もいますよね。行政書士も地道で地味な仕事ですから、「地道にこつこつ書類作成は無理」「地味にひとりで法律や手続きの本と向き合うのは無理」という人は、ちょっと辛いのではないかと思います。反対に、こういった地道で地味な事務処理を計画立ててこなせる人は行政書士に向いている人です。
最後に
最後に、行政書士に向いている人についてまとめてみましょう。
行政書士に向いている人とは次のような人です。
■法律を大切にできる人
→法律は仕事道具だから大切にできるかどうかは重要!行政書士としての信頼にも関わる
■勉強が好きな人、あるいは仕事のためなら勉強できる人
→法律改正や手続きのルール変更があればしっかり勉強しなければ仕事ができない
■責任感がある人
→手続きや書類作成が人生や生活に影響を与えることを理解して仕事に責任を持つことが重要
■仕事上のルールをしっかり守れる人
→マイルールではなく求められる手続きや書類作成のルールに従うのが行政書士
■地道な事務処理が苦にならない人
→書類作成や手続き、相談などが仕事なので、世間が想像しているより地味で地道
以上が現役の行政書士から見た行政書士に向いている人です。
よくコミュニケーション能力などと言われますが、行政書士として仕事をし、自分で事務所を切り盛りするようになれば、そのあたりは少しずつ伸ばせるはずです。はじめから営業マンのようなコミュニケーションスキルが求められるわけではありません。
資格取得に悩んでいる人やスキルアップを考えている人は、まずは5つのポイントから「自分に行政書士が向いているだろうか」を考えてみてください。