実印と認印の違いとは?銀行印との違いも解説

 

印鑑には実印や銀行印、認印などがあります。手続きのときに「判子をお願いします」と言われても、「いろいろあるのでどの判子か分からない」となってしまうことはありませんか。書類に判子を押すときに「実印じゃなく認印でもいいですか」なんて確認を取ることはないでしょうか。行政書士の仕事にも印鑑は付きものです。

今回の記事では印鑑の違いについて解説したいと思います。

・実印とは

・認印とは

・銀行印とは

・実印、認印、銀行印の違い

・近年の印鑑事情

印鑑に関する基本的な知識を行政書士が解説します。

基本的なことを覚えておくと手続きの際に役立つはずです。また、近年の印鑑廃止の動きなど、おさえておきたい印鑑事情についても併せて説明します。

日常的に使う印鑑には主に3つの種類がある

私たちが生活の中でよく使う印鑑はおおむね3つです。

・実印

・認印

・銀行印

3つの印鑑はどれも判子であることは同じなのですが、用途や形状などに違いがあります。

たとえば、銀行印を使わなければならない場面で認印を出してしまうと「判子が違いますね」と言われて手続きができないこともあります。また、実印を使わなければならない場面で認印を使ってしまうと、「実印でなければ駄目です」と手続きでNGを食らってしまうわけです。

印鑑の種類はややこしいですが、日常生活の手続きをスムーズに進めるためにも覚えておきたい知識なのです。

実印から順番にそれぞれの印鑑の役割や形状などを説明します。

実印とは

実印とは会社や個人の「登録された印鑑」のことです。

登録された印鑑は役場や法務局で「この印鑑は確かに登録されています」というお墨付きがもらえます。書類に実印を押すと印鑑証明で「本人(会社)の印鑑である」と分かるわけですから、印鑑の中でもひときわ力の強い判子です。

各種の公的な手続きの中でも「重要なもの」「本人に負担を課すようなもの」「本人が自分の意思で手続きすることが大切なもの」については、実印を求められるケースが多いと言えるでしょう。

実印は本人が実印用として判子を購入しても登録しなければ意味がありません。法人の場合は法務局に届出て登録し、個人の場合は各自治体の窓口(役場に足を運んで「印鑑登録」と伝えれば手続きしてくれます)への届出・登録が必要です。

登録できる印鑑は形状や大きさにルールがあり、登録時は確認が必要になります。実印登録のために印鑑を作る場合は印鑑屋に「実印です」と伝えれば、ルールに沿った形状や大きさを提案してくれます。

認印とは

認印とは「内容を確認しました」など、簡易的なチェック・印の意図で用いられる判子のことです。

たとえば、会社に勤務している方の中にはこんな経験がないでしょうか。部署内を社内の通達が回っています。確認した社員はチェックを入れて欲しいとのことでした。あなたは社内の通達をチェックし、「見ました」という印として自分の苗字入りのシャチハタ印をポンと押しました。

これが認印のよくある例です。

認印はこの他にも「見ました」「確認しました」といった意図で、次のような書類・連絡に使われることがあります。

・書類の提出時

・郵便や荷物を受け取るとき

・サインの代わり

・回覧板などをチャックしたとき

認印はあくまで「確認しました」程度の意味しかありません。そのため、重要書類や手続きの際は「認印不可」になっていることが少なくありません。

なぜ重要な書類に関して認印がNGになっているかと言うと、認印は誰でも簡単に購入し、押せてしまうからです。

実印は法務局や自治体への登録が必要になります。しかし、認印に関しては、登録は特に必要ではありません。だからこそ、いざというときに自治体や法務局のお墨付きを得られないのです。赤の他人が勝手に三文判やシャチハタを購入して重要書類に判子を押せてしまいます。シャチハタや三文判などその辺ですぐに手に入りますので、悪意のある赤の他人が不正し放題になってしまいます。

認印はあくまで「見ました」「確認しました」と「チェックする(認める)」程度の意味合いで使われる印鑑です。なお、認印に関してはシャチハタでも基本的にOKになっています。3種類の印鑑の中でも、最も手軽な判子だと言えるでしょう。

銀行印とは

銀行印とは「銀行など金融機関の手続きに使う印鑑」のことです。

銀行印の用途は「貯金者本人の印鑑か(貯金者本人が手続きしているか)」を確認するためです。

たとえば、銀行に定期預金100万円を預けていたとします。急に車の修理でまとまったお金が必要になったため、銀行の定期預金を解約することにしました。銀行窓口で解約を申し入れると、解約のための書類に銀行印を押して欲しいと言われました。このときに使う印鑑こそが銀行印です。

銀行印は基本的に口座を作成するときに銀行に届出している印鑑になります。定期預金の解約など重要な手続きの際に書類に押して、銀行側は「本人か」「本人による手続きか」などを確認するわけです。実印とはまた違った、金融機関での手続きに使う印鑑が銀行印になります。

実印・認印・銀行印の違いまとめ

実印、認印、銀行印はそれぞれ異なる役割や意味を持っていると説明しました。

ここからはそれぞれの印鑑を比較しながら違いについてまとめます。

実印 認印 銀行印
登録の要否 自治体や法務局への届出・登録が必要 不要 銀行への届出(口座開設の際の書類に押印)などが必要
規定・ルール 自治体などでサイズが決まっている

シャチハタなどはNG

シャチハタなどでも良く厳格なルールはない シャチハタやゴム印などはNG
印鑑の内容 個人の場合は姓名など

法人の場合は社名+代表者など

厳格なルールはないが、苗字がよく使われている 苗字や苗字+名前など
主な用途 重要な契約や取引などで使う 「チャックした」「見た」などの確認に使う 銀行など金融機関の手続きで使う
使われる主な場面 不動産や自動車の売買

ローン契約

社内や地域の回覧板のチェック時

郵便物や荷物の受け取り時

銀行の口座開設

銀行の定期預金の解約

近年の印鑑事情

近年、脱ハンコの動きが高まっています。

行政での手続きでは、今まで「判子を押してください」が基本でした。自治体の窓口に必要な書類を取りに行ったとき、多くの方は判子を求められた経験があるはずです。

しかし、2020年11月から、一部の手続きを除いて行政手続きでの押印が廃止されました。2023年7月26日現在、次のような手続きでは印鑑不要になっています。

・婚姻届

・離婚届

・住民票の請求

・確定申告

・年末調整   など

これらは手続きに際して押印が不要になっています。

住民票の請求をすると2020年7月の前までは「判子をお願いします」と言われていましたが、以降は判子なしで交付してもらえるということです。

なお、行政手続きは判子不要・オンライン化の方向で進んでいますが、すべての手続きが印鑑不要となっているわけではありません。印鑑が必要な手続きと不要な手続きが入り混じっているため、何か手続きをする際は判子の要否に関して確認が必要です。

最後に

印鑑にも種類があります。今回は主に3種類の印鑑について説明しましたが、この他にも士業印などの種類があります。

手続きによって求められる印鑑が異なりますので、印鑑の種類や用途などは基本的なポイントをしておさえておくと便利です。

また、手続きの際は「どの印鑑が必要か」「押印が必要か」をあらかじめ確認しておくと、スムーズに進めることが可能です。