資産運用関係の情報で年末から年始にかけて「iDeCoが改悪した!」と騒ぎになっています。
正確には改悪というよりiDeCoの改正なのですが、結果として使いにくくなっていれば「改悪」と騒がれてしまいます。
なぜiDeCoは2024年年末~2025年年始にかけて「改悪だ」と騒がれているのでしょう。
- iDeCoは本当に改悪されたのか?
- なぜ改悪だと騒がれたのか?
iDeCoの基本的な知識と併せて改悪と騒がれた理由について解説します。
目次
iDeCo(イデコ)が改悪したって本当?
まずSNSなどで「改悪だ」と騒がれた真偽ですが、結論から言うと改悪とも言えますし、特に改悪ではないとも言えます。今回のiDeCoの改正で一部の方には税金が増える可能性があるのですが、あくまで影響は一部であり限定的です。
SNSなどでは少しでも増税に繋がりそうな話が出ると、ことの真偽に関係なく「増税だ」「改悪だ」「政党を倒せ」と過熱するので、今回のiDeCoについても同様です。極端に改悪というわけではなく、
一部影響あり
改正により一部の人に増税の可能性あり
くらいの話で、iDeCoを使うほとんどの方には影響ありません。
影響のある方にとっては改悪かもしれませんが、他の方にとっては特に問題なしです。
SNSなどではちょっとしたことでも加熱しますので、あまり信用し過ぎないことが重要です。
改悪と騒がれている場合は「大変なんだ」と慌てる前に、しっかりと情報の裏を取るようにしましょう。
iDeCo(イデコ)とはどのような制度?
iDeCoの改正についてお話しする前に、まずは iDeCo(イデコ)とはどのような制度なのか簡単に説明します。
iDeCoとは節税に使える制度で「国民年金にプラスできる個人年金のこと」です。
iDeCoに加入することで掛け金を拠出し、その掛け金を運用することで自分用の個人年金を準備できるという制度になっています。
iDeCoについては過去記事にまとめていますので、参考にしていただければと思います。
iDeCoに加入するメリット
iDeCoに加入するメリットは3つあります。
- 国民年金などにプラスしてiDeCo分の年金を受け取れる
- 厚生年金を受け取れない個人事業主などの厚生年金のように使える
- iDeCoに加入することで税制優遇を受けられる
iDeCoは任意加入の個人年金なので、公的年金にプラスして受け取れるところが魅力です。
加えて、個人事業主などは会社の厚生年金に加入できませんので、個人事業主にとっては国民年金にプラスして受け取れる厚生年金のように使える点も魅力と言えるでしょう。
さらに、iDeCoには税制優遇を受けられるというメリットがあります。
iDeCoで受けられる税制優遇とは?
iDeCoで受けられる税制優遇は3つあります。
税制優遇のメリットをおさえることで「なぜ改悪と言わるのか」を理解しやすくなります。
- 掛け金が控除の対象になる
- 運用時の利益も非課税である
- 年金を受け取るときも控除の対象になる
iDeCoのメリットである税制優遇は公式サイトでも確認可能です。
iDeCo全般の情報が集約されていますので、こちらのサイトを一読しておくことをおすすめします。
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/good.html
iDeCoの掛け金は控除の対象になる
iDeCoに拠出した掛け金は控除の対象になります。
iDeCoの掛け金を拠出する場合、そのお金は基本的に個人事業主などのお財布から出ます。
掛け金にしなかったら所得税などの対象になるところ、iDeCoの掛け金として拠出することで、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)という税制優遇を受けられるわけです。
iDeCoによる運用で出た利益も非課税になる
資産運用で投資信託や株式などに投資して利益が出ると、利益に対して20%ほどの税金がかかります。
しかし、iDeCoとして運用すれば、利益分に税金はかかりません。
資産運用の利益が非課税になるという税制優遇を受けられます。
年金を受け取るときも控除の対象になる
iDeCoで掛け金を運用した将来的に年金として受け取る場合、その年金も税制優遇の対象になります。
iDeCoの年金の受け取りは「年金」と「一時金」の2パターンです。
年金として毎月こつこつ受け取る場合は公的年金等控除の対象になり、一時金として受け取れる場合は退職所得等控除の対象になります。
iDeCo(イデコ)の改正内容とは?2024年~2025年に改悪と騒がれる理由
SNSなどで「iDeCoが改悪された!」と騒がれたのは、iDeCoに関する改正が原因です。
iDeCoに限らず制度・税金のルールは定期的に見直されます。その際に従来の制度内容と変わってくると当然ながら使いにくくなる人や、損する人も出てきます。反対に、かえって使いやすくなる人も出てくるわけです。そうすると、使いにくくなった人を中心にSNSなどで「改悪!」という騒ぎになります。
加えて、資産運用などで稼いでいる人(情報発信で利益を得ている人など)も「改悪!」と騒ぐことはよくあります。騒がれて炎上騒ぎにでもなった方が儲かるからです。
iDeCoをはじめとして制度・税金ルール・法律などが改正されたときは、
- 具体的にどのような内容が改正されたのかを把握する
- 自分の身に置き換える(自分にどのような影響があるか判断する)
ことが重要です。
特に影響のない方まで「改悪だ」と騒ぐと噂や誤情報が独り歩きしますので、冷静に裏を取ること、裏を取った上で自分は今後どのように変更内容と付き合って行くのか考えることも重要になります。
iDeCoの注目すべき改正内容は3つ
iDeCoの改正で注目したいポイントは3つあります。
- iDeCoの加入や利用が便利になった
- iDeCoの掛け金上限額が引き上げられた
- 退職所得控除が変更された
iDeCoの改正については政府広報ページなどでも確認可能です。
https://www.gov-online.go.jp/article/202412/entry-6825.html#firstSection
iDeCoの加入や利用が便利になった
今までiDeCoへの加入時や転出時に一部の人は書類を提出して手続きしなければいけませんでした。
iDeCoの改正により、今までの面倒な手続きが廃止されました。
加入や利用時の手続きに関して、対象になる一部の方たちがより使いやすいように、手間がないように改正されたわけです。
iDeCoの掛け金上限額が引き上げられた
他の共済に加入しているなど、一部の方のiDeCoの掛け金は今まで1万2,000円が上限額でした。
今回のiDeCoの改正により、上限額が2万円に引き上げられました。
今まで1万2,000円が上限で「掛け金をもっと増やしたい」と考えていた方は、改正により、より便利にiDeCoを使えるようになります。
退職所得控除が変更された
退職所得控除の見直しは、厳密に言うとiDeCoの制度そのものの改正ではありません。
退職所得控除のルールが見直された結果、iDeCoの税制優遇・控除も影響を受けるに過ぎません。
今までiDeCoの方で一時金としてお金を受け取り、それから5年以上間隔を空けて会社の退職金を受け取ると、iDeCoはiDeCoで控除を受けられ、会社分は会社分で控除を受けられました。
この5年という期間が今回10年に変更されました。
人によっては増税や不利な退職金の受け取りに繋がるわけです。
この退職金関係の「5年から10年へ」という変更が原因で、「改悪だ」と騒がれる結果になりました。
https://www.sankei.com/article/20241226-4SWWGYEZIRH4XOTGB6QJ7YTEX4/
2024年と2025年に騒がれたiDeCo改悪の後も制度を利用すべき?
2024年末~2025年始にかけて「iDeCoが改悪された!」と騒がれましたが、今後もiDeCoを活用すべきなのでしょうか。それとも、改悪された(一部の人に影響が出てしまう)から使うのをやめたり、加入を見直したりすべきでしょうか?
iDeCoの改悪騒ぎで利用をストップしたり、加入を見直したりする必要はありません。
iDeCoは2025年1月現在も節税に使える制度であり、将来的な生活資金の捻出に有益な制度です。
結論から言うと、iDeCoは今後もおすすめです。
iDeCoを今後もおすすめするのは4つの理由からになります。
- 掛け金の控除や運用益の非課税などの税制優遇は今まで通り問題なく使えるから
- 老後の生活資金など将来のための備えとして有益な制度だから
- 退職所得控除見直しの影響をほぼ受けない人もいるから
- iDeCo改正によりかえって使いやすくなっている方もいるから
iDeCoでは一部の改正はあったものの、掛け金などの控除は今まで通りです。また、制度の主旨である個人年金の準備という点も今までと変わりません。
退職金については、そもそも影響を受ける人と受けない人がいます。また、一部の人が改正で悪い影響を受ける反面、良い影響を受ける人もいます。
こういった点を総合的に考慮すると「一部だけを切り取って改悪と断言はできない」「今まで通り控除や年金の点からおすすめの制度である」と言えるのではないでしょうか。
まとめ|iDeCoは本当に改悪なのか?
iDeCoのルール改正・税金のルール改正により、2024年末~2025年にかけて「改悪だ」と騒がれました。
ある人にとっては改悪だが、別の人にとってはかえって便利になった可能性がある
ある人にとっては改悪だが、影響を受けない人にとっては特に問題ない
という結論です。
今後もiDeCoなどは時代に併せてルール改正されると考えられますので、制度を利用している方や利用を検討している方は、定期的に情報をチェックしておきましょう。
その際は「改悪」など、言葉だけにだまされないことが重要です。