個人事業主が報酬の未回収を防ぐために普段からすべきこと

個人事業主がたくさん仕事をしても、その分の報酬を受け取れなければ意味がありません。仕事だけこなしても報酬を回収できなければ、手元の財産・売上はまったく増えないのです。報酬まで回収してこそ仕事が完了するとも言えるでしょう。

ただ、多く仕事をこなすと、その分だけいろいろな取引先・クライアントとお付き合いすることになるわけですから、報酬の未回収リスクは高くなります。売上を高くする、より稼ごうとする、そうすると自然と報酬の未回収リスクや実際の未回収問題と直面するわけです。個人事業主やフリーランスとして「売上アップ」「稼ぎを増やす」ためには、債権の未回収対策を考えておく必要があります。

個人事業主やフリーランスが報酬の未回収を防ぐために普段からできることはあるのでしょうか。個人事業主やフリーランスが日常的にできる報酬未回収対策について解説します。

個人事業主やフリーランスが実際にできる報酬未回収対策は5つ

個人事業主やフリーランスの多くは「報酬が支払われない可能性がある」というリスクを抱えています。取引先が倒産する可能性もありますし、担当しているスタッフが報酬の支払いを忘れているかもしれません。クライアントが報酬を踏み倒そうとすることもあるでしょう。諸般の事情から「報酬が払われないかもしれない」というリスクを抱えており、実際に払われない可能性を理解しているフリーランスや個人事業主は多いと言えます。

しかし、リスクを理解していながら、あまり対策をしていないフリーランスや個人事業主も多いのが実情です。いざ報酬が支払われないという段になってから「大変だ」と慌てるフリーランスや個人事業主は少なくありません。

報酬が未回収になる前に、常日頃から報酬の未回収対策をして少しでも報酬が支払われないリスクを低くすることが重要ではないでしょうか。個人事業主やフリーランスが日常的にできる報酬の未回収対策には次のような方法があります。

1.自分の生活用口座とは切り離した報酬用口座を準備する

2.報酬の支払い状況をリストで照合する

3.報酬の支払い状況をダブルチェックする

4.与信管理を徹底する

5.報酬の支払い遅れへの対策を具体的に決めておく

対策①自分の生活用口座とは切り離した報酬用口座を準備する

個人事業主やフリーランスの中には仕事と生活用の口座を切り離していない方も見受けられます。私生活の自動車ローンの引き落としをしており、さらに生活費をプールしている。そして何かあればその口座からお金をおろして使っている。そんな私的な口座にフリーランスや個人事業主の売上・稼ぎを一緒にしているわけです。

私的な口座を報酬の受け取り口座にしてしまうと、報酬管理が難しくなります。生活費関係の引き落としやローンの支払い、報酬の振り込みなどが記帳時に混ざりあい、後から「A取引先の報酬支払いがない」「今更気づいたが、報酬の支払いが遅れている」と気づく結果になります。

個人事業主やフリーランスが報酬の未回収を防ぐためにも、報酬用の口座を作ってこまめに記帳し、報酬の入金状況を確認しましょう。報酬の未払いを防ぐためにも、「状況を分かりやすくチェック・管理できる」状態にすることが重要です。

対策②報酬の支払い状況をリストで照合する

報酬の未回収を防ぐためには報酬の未入金をリスト化することも効果的です。

リスト化はエクセルなどで行っても構いませんし、ファイリングなどを活用しても良いでしょう。私の周りの個人事業主やフリーランスが実際に行っている報酬未払いのリスト化方法には次のようなものがあります。

・報酬未払いの案件をエクセルで管理している→報酬が入金されたら入金日付を添えて既入金リストへ

・受けた案件を日付、番号を付して順番にファイリングしておく→報酬が入金されたら既入金ファイルの方へ案件情報の紙をファイリングし直す

経理系のソフトを使っている方や、それぞれの業種に特化しているシステムを使っている方は、報酬の支払い管理などの機能も付いていることがあるので、ソフト・システムで管理しているというケースもあります。

ただ、ソフトやシステムがあるからといって必ずそれらで管理する必要はありません。私の周りの個人事業主やフリーランスなどはファイリングやエクセルなど自分の管理しやすい方法も取り入れているので、「分かりやすく管理できればそれでいい」という気持ちで行うのが良いでしょう。

報酬未払い案件を効率的に管理できれば、入金状況が一目で分かりますので、それだけ未払いを防ぐ対策になります。少なくとも「忘れていた」という事態は防げるはずです。

対策③報酬の支払い状況をダブルチェックする

報酬の未払い状況をダブルチェックすることも対策になります。

たとえば、A口座を個人事業主・フリーランスの報酬受取口座にしていたとします。報酬の受け取りを確認したら、通帳の入金記録のところに線を引き案件番号をメモするなど、まずは第一のチェックを行います。この後にフリーランス・個人事業主の仕事場で報酬の未入金リストを確認し、リストと記帳内容をチェックするという流れでダブルチェックするというのはどうでしょう。

「報酬が入った」と思っても、意外とチェックミスが発生するものです。案件ごとに金額がまったく違っていると分かりやすいのですが、士業などは似たような内容の案件を受けていることも多いため(複数クライアントの補助金の申請業務など)、報酬も似た金額になることが少なくありません。結果「金額が似ていたためチェック時に間違えた」「間違えた結果、一部の報酬を回収し損ねていた」という事態が発生することがあります。

報酬の支払い状況・回収状況はダブルチェックし、似たような報酬で支払い・未払いを間違えないようにしましょう。

対策④取引先やクライアントの与信管理を徹底する

同じクライアントや取引先と何度も仕事をしている場合は、与信管理を徹底しておく必要があります。

報酬に支払期限を付しても、その期限内に振り込んでこないクライアントは珍しくありません。普段の報酬への対応から与信管理を徹底し、「しっかり対応してくれるところ」「対応が遅いところ」「約束を平然と破るところ」と仕分けしておくことをおすすめします。報酬の回収が遅れているときに仕分けリストを見れば「ああ、またここの会社か」と分かるわけです。

取引先の報酬への対応は常日頃からチェックし、今後の取引を考えるためにも与信管理を徹底しておくことが重要です。あまりにも報酬に対して杜撰な対応をする取引先・クライアントについては、トラブルリスクなども考え、関係の継続を定期的に見なおすことをおすすめします。

対策⑤報酬の支払い遅れへの対策を具体的に決めておく

報酬の支払いが遅れている先に対して「催促するのは面倒」「言いにくい」という個人事業主やフリーランスは少なくありません。しかし、フリーランスや個人事業主は仕事に対する給料が約束されているわけではありませんから、報酬の回収ができなければ稼ぎになりませんし、そもそも報酬の回収までが仕事だと言えるでしょう。

報酬の支払い遅れを一度経験しているなら、「どのくらいの遅れで催促するか」「催促の際はメールなどの文面をどうするか」などを具体的に決めておくと良いでしょう。

ほとんどの個人事業主やフリーランスは「催促などしたくない」「気が重い」と思うでしょうが、具体的な手順や文面などを決めておけば気の重さも少しは軽減できるはずです。「気が重い」で催促もせず、ずるずると未払いが長引く方がリスクがあると言えるでしょう。

最後に

個人事業主やフリーランスは報酬を受け取ってはじめて仕事が終了になります。報酬をしっかり回収できないと生活に影響も出てしまいますし、タダ働きになってしまいます。だからこそ、報酬をしっかり回収できるよう普段から対策しておくことが重要です。