起業家や事業主が「もしも」のときに使える制度に「中小企業倒産防止共済」があります。
起業家や事業主として仕事をし、事業を回している場合は自社・事業への予想外の打撃に備えることも重要な仕事ではないでしょうか。中小企業倒産防止共済は取引相手からの不測の打撃に備えられる制度です。
・中小企業倒産防止共済とは
・中小企業倒産防止共済のメリット
・中小企業倒産防止共済の注意点
この記事では起業家や事業主がセーフティとして使いたい中小企業倒産防止共済の概要やメリット、利用時の注意点などを解説します。
目次
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは?
起業家や事業主が自身の仕事や事業に専心していても、予想外のところから経営に打撃を受けてしまうことがあります。取引先の経営悪化による倒産です。
取引先が倒産してしまうと売掛金などを回収できず、自社の資金繰りが悪化することが考えられます。最悪のケースでは連鎖倒産に至ることもあるはずです。中小企業倒産防止共済は、中小企業やベンチャー企業の連鎖倒産を防ぐための制度です。
中小企業倒産防止共済に加入していると、取引先の倒産など不測の事態で資金繰りが悪化した場合は、共済金を受け取れるという仕組みになっています。
中小企業やベンチャー企業の場合は取引先の倒産などにより資金繰りが悪化しても、銀行から融資を受けることは難しいのが実情です。中小企業やベンチャー企業の場合、取引先の倒産ひとつで経営状況が不安定になるケースが少なくないため、銀行から融資を断られることが多いからです。
中小企業倒産防止共済は中小企業やベンチャー企業の連鎖倒産を防ぐための制度であると共に、銀行融資を受けにくい中小企業やベンチャー企業のつなぎ融資的な性質も持つ制度になります。
中小企業倒産防止共済の制度概要
中小企業倒産防止共済に加入していると、中小企業やベンチャー企業の取引先が倒産したなどの事態に陥った場合、最高10倍(上限8,000万円)の共済金を受け取ることが可能です。
中小企業倒産防止共済で共済金を受け取れるのは取引先が次のような事態に陥り打撃を受けたケースです。
・取引先の法的整理
・取引先の取引停止処分
・でんさいネットの取引停止処分
・取引先の私的整理
・災害による不渡り、でんさいの支払不能
・特定非常災害による支払不能
後から説明しますが、取引先の倒産ケースによっては共済金を受け取れません。ただ、中小企業倒産防止共済はセーフティとしての役目を持っていますので、よくある取引先の倒産ケースは基本的に共済金の支払いケースに該当すると考えていいでしょう。
中小企業倒産防止共済への加入資格
もしものときに中小企業倒産防止共済の共済金を受け取るためには、あらかじめ共済に加入し掛金を払わなければいけません。
中小企業倒産防止共済に加入できるのは「継続して1年以上事業を行っている中小企業者」で、かつ、「会社または個人の事業主、組合」です。会社または個人の事業主の場合、業種によって加入できる事業規模があるため中小企業倒産防止共済の公式ホームページを必ず確認してください。たとえば卸売業は「資本金(出資)1億円以下で従業員100人以下」が加入対象になる個人・中小企業の規模になります。
組合が加入したい場合は、加入対象になる組合と対象外の組合があります。
中小企業倒産防止共済の掛金
中小企業倒産防止共済の掛金は5,000円から20万円まで5,000円単位で設定できます。掛金は総額800万円になるまで積立可能です。
掛金は基本的に口座振替で、振替日は毎月27日になります。
中小企業倒産防止共済の加入手続き
中小企業倒産防止共済の加入手続きは4つのステップで完了します。
・必要書類を準備する
・書類に記入する
・窓口に書類を提出する
・「共済契約締結証書」と「加入者必携」を受け取る
中小企業倒産防止共済に加入したい場合は必要書類を準備して窓口に提出する必要があります。加入手続きについてもう少し詳しく説明します。
ステップ①必要書類を準備する
中小企業倒産防止共済の加入には書類が必要です。書類は法人と個人で異なります。仮に個人事業主が中小企業倒産防止共済に加入したい場合は次のような書類が必要です。
・契約申込書
・重要事項確認書兼反社会的勢力の排除に関する同意書
・掛金預金口座振替申出書
・所得税の確定申告書(直近の決算書・収支内訳書等の添付書類を含む) 提示書類
・所得税を納付したことを証する「納税証明書(その1)」 提示書類
・確定申告書を作成するときに使用した帳簿等(白色申告書の場合) 提示書類
確定申告書は税務署の印が押されているものが必要です。また、「重要事項確認書兼反社会的勢力の排除に関する同意書」と「掛金預金口座振替申出書」は契約申込書とセットになっています。
法人の場合は法人の登記事項証明書や法人税の確定申告書などが必要書類です。
ステップ②書類に記入する
加入に必要な書類の中で契約申込書などは記載が必要です。中小企業倒産防止共済の公式サイトに記載例が掲載されていますので、確認の上で必要事項を記入してください。
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/entry/procedure/frr94k00000012d1-att/t_101_sample_202204.pdf
口座振替申出書なども同様に記載を要します。
ステップ③窓口に書類を提出する
必要書類の記載が完了したら、窓口に必要書類の一式を提出してください。共済と提携している金融機関の窓口が提出先になります。都市銀行や信用金庫、地銀などが窓口になっています。
金融機関から融資を受けている場合などは、その金融機関の窓口から申し込んでください。
ステップ④書類を受け取る
加入手続きが完了すると2カ月ほどで「共済契約締結証書」と「加入者必携」が送られてきます。これらの書類は中小企業倒産防止共済への加入を証明する書類であり、手続きの際に必要になります。大切に保存してください。書類を受け取れば加入手続きは完了です。
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)のメリット
中小企業倒産防止共済のメリットは取引先の倒産により共済金を受け取れること、ひいては連鎖倒産を防げることです。ただ、中小企業倒産防止共済のメリットはそれだけではありません。共済金の受け取り以外に3つのメリットがあります。
メリット①支払った掛金が経費になる
中小企業倒産防止共済の掛金は全額経費になります。節税しながら取引先のもしもに備えられるメリットがあります。
メリット②解約時に掛金を返してもらえる
中小企業倒産防止共済は12カ月の加入後に解約すると8割、40カ月以上の加入後に解約すると全額の掛金が返却されます。
中小企業倒産防止共済の掛金は経費扱いなので、節税しつつ預金のようかたちで利用することも可能です。
メリット③借り入れの利用が可能
中小企業倒産防止共済に加入していると、急いで事業資金が必要なときに一時貸付金の利用が可能です。借り入れの上限は解約手当金の95%になります。
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の注意点
中小企業倒産防止共済の利用で注意したいポイントは2つあります。
・解約時の加入期間によっては元本割れになる
・解約時の払い戻し金に対しては課税がある
解約時の加入期間が40カ月未満だと、掛金を満額返却してもらえないため元本割れになってしまいます。
また、中小企業倒産防止共済の掛金は経費扱いですが、解約により払い戻しをされた場合は課税対象になるため、注意が必要です。
まとめ
取引先の倒産は不測の事態であり、予想は容易ではありません。中小企業倒産防止共済はいざというときのセーフティになります。
また、中小企業倒産防止共済に加入している場合、いざというときの借り入れの利用や、掛金が経費になるなど、事業や節税で役立つメリットもあります。起業家や事業主は注目したい制度です。