節税に使える特例・控除ってなに?

節税をしたい個人事業主/フリーランスは「経費を計上する」という方法があります。

経費とは個人事業主やフリーランスの仕事に必要だった出費のことです。

たとえば、個人事業主が仕事のために印刷機や文房具を購入し、実際に使っていたとします。印刷機や文具は個人事業主が仕事に使った物であり、購入費用は仕事の経費です。よって、確定申告の際は個人事業主の売上から印刷機や文具の購入費用を経費として引くことが可能です。

経費を引くことで税金計算に使う金額が少なくなるため、算出される税金の額もそれだけ小さくなります。仕事の経費を忘れずに計上することで節税できます。

また、個人事業主/フリーランスが使える節税方法としては、特例や控除があります。特例や控除も忘れずに使うことでさらなる節税が可能です。

・特例/控除とは何か

・特例/控除の種類

・特例/控除を使うメリット

・特例/控除を使うときの注意点

・特例/控除を使うときのポイント

個人事業主として仕事をしている行政書士が、個人事業主/フリーランスの節税方法として特例・控除についてご紹介します。

特例/控除とは?

特定・控除とは税金の申告や計算のときに 条件に当てはまっていれば使える制度 です。

たとえば、ある控除で「Aという条件を満たしていれば税額から10万円控除できる」と書いてあったとします。この場合はAという条件を満たせば税額から10万円引くことができます。

税金の額が90万円なら80万円になりますから、特例を使うことで節税が可能になるわけです。税金には「〇まる特定」「〇〇控除」というものが多数定められており、それぞれの利用条件が定められています。利用条件に当てはまっていればその控除や特定を使って税金を抑えることが可能です。

特例や控除については大枠で説明されるより、個別の控除や特例を説明した方が理解しやすいことでしょう。フリーランスや個人事業主に馴染みの深い控除や特例を順番に説明しながら、節税効果にも言及したいと思います。

個人事業主/フリーランスの税金

控除や特例の種類について説明する前に、まずは簡単に個人事業主やフリーランスが納める税金についてご紹介します。個人事業主/フリーランスには以下のような税金が課税されます。

・所得税

・住民税

・個人事業税

・消費税

所得税と住民税は個人事業主、フリーランス、会社員問わず課税される税金です。

所得に対する課税が住民税です。住民税は所得がある限り業種や仕事形態を問わず課税される仕組みになっています。住民税も業種、仕事の形態問わず課税される税金で、自治体の住民サービス全般を維持するための税金です。

個人事業税と消費税は課税される場合と課税されない場合があります。たとえば個人事業主/フリーランスの中でもライターなど執筆の仕事をしている方は個人事業税を課税されていないというケースが多いはずです。個人事業税は個人で仕事をしている方への課税ですが、業種によって課税の有無に違いがあります。

消費税も同様で、売上などの状況により納税が免除されている個人事業主/フリーランスもいます。消費税についてはインボイス制度がスタートし、課税や申告のルールが変わる予定です。

特例/控除の種類

個人事業主/フリーランスが使える可能性のある代表的な控除・特例をご紹介します。

なお、この他にも状況によって特例や控除が使える可能性があります。特例や控除は所得税など個人事業主/フリーランスの売上に関するものだけでなく、相続税など他の税金にも別途定められているため、納税の状況に合わせて調べることをおすすめします。

分からないことがあれば早めに税理士に確認をとっておきましょう。

基礎控除

基礎控除は無条件で誰でも利用できる控除です。個人事業主/フリーランスは業種や状況を問わず基礎控除を受けることが可能です。

基礎控除は個人事業主/フリーランスの総所得金額によって引ける金額が変わってきます。総所得金額が多いほど控除額は小さくなる仕組みです。

・総所得額が2,400万円以下48万円の場合は48万円

・〃2,400万円超2,450万円以下の場合は32万円

・〃2,450万円超2,500万円以下の場合は16万円

・〃2,500万円超の場合は0円

家族に関する控除(配偶者控除・扶養控除・障害者控除)

家族に関する控除には配偶者控除や扶養控除、障害者控除などがあります。個人事業主やフリーランスに配偶者がいる場合や養うべき家族がいる場合、家族に障害者がいる場合などは、一定額の控除を受けることが可能です。

自分に関する控除(障害者控除・勤労学生控除・寡婦(夫)控除)

自分が障害者の場合や学生をしながら働いている場合、寡婦(夫)の場合は障害者控除や勤労学生控除、寡婦(夫)控除の対象になり、一定額を控除できる可能性があります。

保険料に関する控除・小規模企業共済等掛金控除

健康保険や年金保険、生命保険、地震保険などの保険料の支払いについては控除の対象になります。健康保険や年金保険などはほとんどの個人事業主/フリーランスが払っているでしょうから、基礎控除と同様に基本的に使える控除だと思っていいでしょう。生命保険や地震保険については加入状況によります。

小規模企業共済や個人で確定拠出年金などをやっている場合は、支払い分が控除の対象になります。

医療費控除

医療費控除とは、控除の対象になる医療費を個人事業主/フリーランス本人や家族が一定額以上支払った場合に受けられる控除です。

特定の医薬品を購入したときに受けられるセルフメディケーション税制は医療費控除の特例になります。こちらは対象医薬品の購入代金に関する控除です。

寄附金控除

寄附金控除の対象になっている団体などに寄附すると、寄附額や収入状況などに応じて控除を受けることが可能です。節税方法としてよくクローズアップされる「ふるさと納税」も寄附金控除の仲間です。

雑損控除

盗難や災害などで財産に損害を受けた場合は雑損控除の対象になる可能性があります。雑損控除は財産に損害を受けていることを前提に受けられる控除なので、節税効果は得られるものの、総合的には損害によりマイナスになる可能性があります。

特例/控除を使うメリット

特例や控除を正しく使うことで節税できるというメリットがあります。節税することで手元に残る収入が多くなります。手元に残る金額が増えれば貯蓄や投資、自分の趣味など、私生活を金銭的な面で充実させることに繋がるはずです。

特例/控除を使うときの注意点

特例/控除は自分から申請しないと使えません。使える条件を満たしていても、確定申告のときに自分からチェックを入れるなど利用の申請をしていないと、使わせてもらえません。特例や控除は条件を満たしたら自動的に適用されるわけではないため注意してください。

特定や控除を使いたい場合は自分で申請する必要があります。また、特定や控除の中には書類の準備が必要なものが少なくありません。

代表的なものが寄附金控除です。寄附金控除を受けるためには自治体から受け取る寄附の証明書が必要です。確定申告ぎりぎりになって「寄附の「証明書を発行してください」とお願いして基本的にできませんので注意が必要になります。

特例/控除を使うときのポイント

特例や控除を使うときは、あらかじめ早い段階で「自分が使える控除や特例」について調べておくことをおすすめします。なぜなら、確定申告ぎりぎりでは使えない控除があるからです。

たとえばふるさと納税。ふるさと納税は寄附金控除のグループに入ります。ふるさと納税で節税する場合、1月1日から12月31日の間に一連の寄附と手続きを完了していなければいけません。翌年に確定申告をするときに慌てて使おうとしても難しいわけです。

確定申告の直前に慌てずに済むように「使えそうな控除や特例を調べておく」と共に、その控除や特例を使うために「必要なことと条件」についても確認しておきましょう。

まとめ

控除や特例は基本的な節税方法になります。ただ、すべての控除や特例を自由に使えるわけではないため、フリーランスや個人事業主は、節税のためにも常日頃から自分が使える控除・特例をチェックし、利用のための準備を進めておくことが重要です。

自分の使える特例や控除が分からない。節税方法についてアドバイスを受けたい。このような場合は、税理士に一度相談しておくといいでしょう。控除や特例により節税できれば、その分だけ手元に残るお金が多くなります。だからこそ、早めに控除や特例には慣れておきたいものです。

今回ご紹介した控除や特例についても、個別の使用条件について調べておくといいでしょう。

特例や控除について説明。寄付金控除や医療費控除など身近なものを一通り。