個人事業主/フリーランスが仕事をすると、仕事先(あるいは契約先)から報酬が支払われます。報酬に関しては契約内容や仕事内容によってさまざまなので、「単発の仕事で受け取ることが多い」という方もいれば、「案件ごとにかなり違う」という方、「継続的な取引をしているので毎回安定して受け取れる」という方などさまざまいらっしゃることでしょう。
個人事業主/フリーランスは給料ではありませんから、サラリーマンの給料のような報酬の受け取り方はあまりしていないかもしれません。また、支払い先によっては「入金がルーズである」「滞納している」などもあり、自分で報酬(債権)の回収作業が必要になることもあります。自分で積極的に報酬回収(債権回収)のために動かなければならないところが個人事業主/フリーランスの難しいところだと言えるでしょう。
個人事業主/フリーランスが報酬の回収で困ったときに使える、基本的な債権の回収方法をご紹介します。
目次
債権の回収が必要になるケース
個人事業主はフリーランスが仕事をしても発注先がスムーズに報酬を払ってくれるとは限りません。中には支払いを遅延するクライアントや、支払いを踏み倒そうとするクライアントもいます。
仕事に対して相応の代価を払ってもらうのは当然のことです。しかしながらこういったクライアントもいることから、個人事業主/フリーランスは自分から「報酬を払ってもらうように働きかける」「報酬を回収するために動く」ことが必要です。
具体的には、報酬を払ってもらえない、あるいは支払いが遅れている場合は、自主的な債権回収が必要になります。
個人事業主 /フリーランスが自主的に債権回収のために動く必要があるのは、次のようなケースです。
・「お金がないので待ってくれ」と言われている
・報酬の支払い日が過ぎているが音沙汰ない
・言い訳して支払いを引き延ばしている
・なかなか連絡に応じてくれない
・支払いせず連絡が取れなくなった
・クライアントの経営状態が悪いと聞いている など
このようなケースは踏み倒される可能性があるため、早めに債権回収に動いた方が良いでしょう。
個人事業主/フリーランスが使える債権の回収方法
個人事業主/フリーランスが使える債権回収方法には次のようなものがあります。
方法①支払ってくれるように連絡する
債権回収と言うと訴訟などを想像する方もいらっしゃるようですが、費用もかかりますから、いきなり訴訟を起こすようなケースはむしろ珍しいと言えるでしょう。
フリーランスや個人事業主に報酬が振り込まれていなくても、単に支払いを忘れているかもしれません。日付を間違えているという可能性もあります。なので、債権回収の際はいきなり訴訟などの手段に出るのではなく、まずは問い合わせや交渉など、穏便な方法からはじめるケースが多いと言えるでしょう。
個人事業主やフリーランスが仕事の報酬を回収したいときも、まずは依頼主に「報酬はどうなっていますか」「お手続きに行き違いがあったら申し訳ありません」と、メールや電話などで確認してみると良いでしょう。
忘れているだけや勘違いしているようなケースであれば、電話やメールで解決する可能性があります。
方法②債権の支払いについて交渉する
クライアントに支払う気がない場合や踏み倒したいと思っている場合は、電話やメールで問い合わせたくらいでは払ってもらえません。「分かりました」と答えても、けっきょく支払いがないままずるずると時間だけが経過するようなケースもあります。
メールや電話などで解決しないなら、仕事のクライアントとしっかり交渉する必要があります。クライアントが「払うから」と言ってもそれで終了ではなく、「いつ払ってくれるのか」と日時なども確認しておくことが重要です。
なお、債権回収の交渉は弁護士に依頼することも可能です。フリーランスや個人事業主が交渉してたときに「分かった払う払う」といい加減な対応をしていたクライアントでも、弁護士が出てくると慌てて払うことがあります。やはりプロが出てくると怖いものです。弁護士への依頼は費用もかかるため、おすすめできるかはケースによりますが、債権額が高額で相手の対応がいい加減な場合は検討しても良いでしょう。
方法③内容証明郵便を送る
内容証明郵便とは、日本郵便のサービスのひとつです。内容証明郵便は相手に送付した手紙の内容が日本郵便に記録されており、「確かにこのような内容を送っています」と証明してくれるサービスになります。
内容証明郵便はよく債権の回収に使われるサービスです。文書の内容を日本郵便が証明してくれるため、「受け取っていない」「分からない」という言い逃れができません。また、内容証明郵便は消滅時効の完成猶予(消滅時効=権利が行使できなくなってしまう時効の完成を阻む)ためにも使われています。内容証明郵便で個人事業主やフリーランスが督促を出すことで、クライアントが応じてくれる可能性があります。
なお、内容証明郵便は弁護士などに依頼することも可能です。弁護士の名前で内容証明郵便が届けば、それこそクライアントが「時効完成を阻むつもりだ」「訴訟に向けて動き出した」と慌てることでしょう。個人で出すより、報酬を支払わないクライアントへの心理的プレッシャーは高いものになります。
方法④支払督促や少額訴訟
裁判所の手続きと言えば訴訟や調停を連想する方は多いはずです。
裁判所の手続きは訴訟や調停などだけではありません。債権の回収でよく使われる「支払督促」や「少額訴訟」などの手続きがある他、手形取引で使われる「手形・小切手訴訟」などもあります。
支払督促とは、裁判所に「金銭を支払いなさい」と督促状を出してもらう手続きです。支払督促を受け取ったクライアントが一定期間に異議を申し立てなければ、すぐに強制執行できるという強い督促状になります。
少額訴訟とは、60万円以下の金銭の訴えについて1日で結論(判決)を下すタイプの規模の小さな訴訟です。
方法⑤訴訟や調停など
裁判所と言えば、多くの方が訴訟や調停を想像することでしょう。
債権回収において訴訟や調停はある意味、最後の方法でもあります。訴訟や調停には手間も時間もお金もかかりますので、「そこまでして回収するほどの額か」を考えなければいけません。報酬額より費用がかかってしまい、費用倒れになってしまうケースもあります。
なお、注意しなければならないのは、訴訟や調停をしても、裁判所は「回収までやってくれない」という点です。
。ただ、反対に考えると、訴訟の判決などを取れば強制執行という強い方法で回収できるわけですから、そのための布石である訴訟や調停は債権回収の中でも強い手続きだと言えるでしょう。
最後に
個人事業主/フリーランスの債権回収方法についてお話ししました。
債権回収方法もいろいろありますが、共通点は「自分から動き出さなければならない」ということです。報酬を回収してはじめて利益になるわけですから、生活のため、仕事の継続のためにも債権の回収は重要になります。
すぐに訴訟や調停といった方法を考えてはいなくても、方法の使い分けや違いなどは、できれば頭に入れておきたいものです。