FIREムーブメントとは?FIREの歴史

FIREとは「早期退職・経済的な自立」を併せた考え方です。

早期退職の場合、退職までに退職後の生活費を準備しておくことが基本でした。まとまった資金が必要になるため「多額の遺産を相続した」「投資で大当たりした」「事業で大成功を収めた」「もともと資産家である」といったケース以外は、早期退職は難しいのが実情でした。

しかし、早期退職後に資産運用で生活費を工面できる仕組みを作っておけば、一部の資産家や投資家、事業の大成功者以外の人も早期退職が可能です。早期リタイア後に準備資産を運用して生活費を工面するという経済的な自立も併せた考え方が「FIRE」になります。

FIREという考え方は現代こそよくメディアに取り上げられ、多くの人が達成に向かって努力しています。

行政書士である私もFIRE達成のために資金準備を頑張っている人間のひとりですが、一昔前はFIREについて話しても「何それ?」という反応だったものが、近年は「FIREいいよね」「自分も考えてみようかな」という人が増えてきたという印象を持っています。これは、一昔前より世間的なFIREの認知度、知名度が上がっているということではないでしょうか。

今回の記事では「FIREはどのような歴史を経て現在のように知名度・認知度を上げたか」を紹介します。FIREという考え方はいつ頃生まれ、どのような流れで日本での認知度・知名度を上げたのでしょうか。

FIREの基本的な考え方と早期リタイアとの違い

FIREの歴史についてお話する前に、まずはFIREの基本的な考え方と早期リタイアとの違いについて簡単に説明します。

FIREの基本的な考え方

FIREとは経済的な自立と早期退職を併せた考え方です。

日本では60代に入って年金をもらえる頃になったら会社を退職するというのが基本的な考え方ではないでしょうか。FIREでは年金世代になる前に仕事をリタイアします。そして、資産運用で年4%の利益を出し、その利益を生活費に充てるという方法です。

FIREの際はまず年間生活費を計算します。年間生活費が300万円だったとします。FIREでは「25倍ルール」があり、年間生活費の25倍の資金を準備して、その資金を年4%で運用すれば準備した資金を切り崩すことなく生活が可能という仕組みです。

年間生活費が300万円で計算すると、25倍は7,500万円になります。7,500万円を年4%で運用すると、運用益は300万円です。ちょうど年間の生活費を捻出できるわけです。

計算と資産運用を駆使して「お金に働いてもらいながら」リタイア後生活をするのがFIREの基本的な考え方になります。

FIREと早期リタイアの違い

早期リタイアとFIREでは3つのポイントが違っています。

・FIREでは経済的な自立を伴う

・早期リタイアは基本的に生活資金を準備して仕事をリタイアする

・FIREでは資産運用や資金計画が重要である

FIREは資産運用で生活費を捻出するため投資・運用に重点を置きます。基本的な早期リタイアは資産運用で生活費を捻出するというルールがないため、投資をするにしても、4%ルールに縛られることはありません。また、早期リタイアは基本的に暮らせるだけの資金を準備してリタイアするため、リタイア後の生活費を運用で捻出することもありません。

FIREも早期リタイアではありますが、経済的な自立や4%ルール、25倍ルール、生活費を資産運用で捻出するなどの考え方から、早期リタイアそのものとはやや違っています。

FIREの考え方はいつ生まれたのか

ここからはFIREの歴史についてお話します。

FIREの誕生から日本で知名度を上げたのはいつ頃かなど、順番に説明して行きます。

FIREという考え方が生まれたのは1990年代

FIREという考え方が登場したのは1990年代だったと言われています。

1990年代にヴィッキー・ロビンとジョー・ドミンゲスの共著による『お金か人生か』という書籍が出ました。FIREの考え方が登場したのは、この書籍が切っ掛けのひとつだったと言われています。こちらの書籍は現在も販売されており、Amazonなど大手のネット通販でも購入可能です。

書籍『お金か人生か』では「投資で十分に生活できれば働く必要はない(リタイアしても問題ない)」と説明されています。この著書の考え方が現在のFIREの大元になったと言えるでしょう。

ただ、FIREの考え方の大元が本で説明されていたとしても、実行が不可能であれば意味はありません。本が発表された後に実際に投資で生活費を捻出して早期リタイアに成功した人たちがいたからこそ、ここまでFIREの考え方が広まったと言えます。

FIREが日本で知名度・認知度を上げたのは2010年頃

FIREが知名度・認知度を上げてきたのは2010年頃からだと言われています。考え方としては1990年代にすでに大元があったわけですが、すぐに爆発的に広まったわけではなく、アメリカを中心に少しずつ考え方が広まりました。そして、日本に上陸というわけです。

FIREが日本に上陸しても、やはりすぐに考え方が広まったわけではありません。日本でFIRE達成者の報告などがSNSで話題を呼び、メディアなどでFIREについて取り上げられる機会も増えたために、少しずつFIREという考え方が広がっていきました。

FIREに関する書籍なども多数出版され、ネット媒体でもFIREの詳しい情報や体験談などが次から次への登場するに至ります。

2023年現在はいろいろなFIREが登場している

2023年現在、日本でのFIREの認知度・知名度はかなり高くなったと言えるのではないでしょうか。

私自身もFIRE達成を目指していますが、FIREについて話したときに「何それ?」から「早期リタイアの一種だよね」と反応が変わってきていると感じています。

FIREについては海外発の考え方ですが、日本に取り入れられ、日本風の種類なども登場しています。FIREの知名度・認知度が高まり多くの人が注目するようになった結果、より考え方が磨き抜かれたと言えるでしょう。

日本でFIREはさらに発展し、次のようなFIRE種類が話題によく登場するようになりました。

サイドFIRE

サイドFIREとは完全に仕事をリタイアするのではなく、必要な範囲で仕事をしながら早期リタイアする方法です。

たとえば、FIREしたくても資金準備に時間がかかってしまうとします。生活費は月20万円必要でしたが、資産運用で15万円しか捻出できませんでした。この場合、月あたり5万円足りないわけですから、その分を稼ぐために5万円の収入を得るために働くわけです。

サイドFIREはFIREの種類のひとつとして認知されています。また、次の紹介するフルFIREよりFIREのハードルを下げる方法としても知られています。

フルFIRE

フルFIREとは準備した資金を資産運用して、その運用益を生活費に充てて生活するFIREです。

サイドFIREは必要なだけ仕事をしながら早期リタイアする方法ですが、フルFIREは仕事をするわけではなく、準備した資産を運用し、その運用益だけで生活し完全にリタイアする方法です。フルを「完全」と読み替えると分かりやすいのではないでしょうか。

FIREと言われて多くの方が真っ先に想像するのが、このフルFIREという方法ではないでしょうか。

最後に

FIREの歴史について説明しました。

FIREは1990年代に大元の考え方が生まれ、そこから少しずつ考え方が広がって行きました。日本で知名度、認知度が広がり出したのは2010年くらいのことで、その頃から次第にメディアなどで取り上げられる機会も増えて行きました。現代はネットに多くの記事があり、SNSなどをチェックすると体験談も散見されます。

早期リタイアのいち手法として、FIREはかなり有名になったと言えるでしょう。

FIREは日本の働き方や社会に合わせて、方法もかなり磨き上げられている状況です。日本式にブラッシュアップされたFIREとしてフルFIREやサイドFIREを取り上げましたが、この他にも種類があります。ぜひFIREの歴史だけでなく各種の方法にも触れてみてください。