自分でできる債権回収の方法と自分でやらない方がいいケース

個人事業主をしている方の多くは、何らかの支払いトラブルを経験したことがあるのではないでしょうか。

  • 報酬を払ってもらえない
  • 相手がのらりくらりと言い逃れする
  • こちらも仕事だからしっかりお金を回収したい

このようなときに有効な手立てが債権回収です。

債権回収は一般的に「弁護士に依頼するもの」という印象があるかもしれません。実は、特に「弁護士に依頼しなければならない」というルールはありません。個人事業主やフリーランスの方が自分でできる債権回収方法もあります。

ただ、中には自分では債権回収をやらない方がいいケースも少なからずあります。未払いなどに悩んでいる。あるいは弁護士に相談するか迷っている。このようなときは、まずは「自分で債権回収に乗り出しても大丈夫そうなケースか?」を考えてみてはいかがでしょう。

この記事では基本的な債権回収の方法と、自分では債権回収をやらない方がいいケースについて解説します。

自分でできる債権回収の方法とは?

債権回収にはいろいろな方法があります。

内容証明郵便を使った方法や法的対処などが主な方法です。

まずは基本的な債権回収の方法についておさらいします。

債権回収の方法 具体的な内容
電話やメールなどでの督促 電話やメールで「支払いがまだである」「早く払って欲しい」など支払いを促す方法
内容証明郵便で督促する 日本郵政の内容証明郵便(郵便局に『いつ』『誰に』『どのような内容の』手紙を出したか記録が残る手紙)で相手に支払いを促す方法
支払督促 裁判所で手続きして支払督促を送る方法。支払督促とは、裁判所から督促状を送ってもらう方法

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_04_02_13/index.html

少額訴訟 裁判所の少額訴訟で相手に支払いを求める方法。少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に使える1日(1期日)で審理と判決を終わらせる方法

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_04_02_02/index.html

調停 裁判所で当事者間の話し合いで解決する方法。支払いをしない債務者に対して裁判所での話し合いで債権回収する方法
裁判 裁判で支払いを請求する方法。調停は話し合いによる解決を目指す方法だが、裁判は裁判官が判決を出す方法
強制執行 債務者の家や預金など財産を差し押さえ、そこから債権を回収する方法

電話やメールなどによる督促や内容証明郵便による督促などは個人でもよく使われています。

ただ、中には「内容証明郵便の使い方がよく分からない」「文面に悩む」などの理由から、内容証明郵便を出すときも弁護士などの士業に依頼するケースも少なくありません。

債権回収以外に使える方法もある

内容証明郵便による督促や少額訴訟、支払督促などによる債権回収以外にも未払いで困ったときに使える方法があります。

よく使われるのはファクタリングです。

ファクタリングとは、債権を債権の買取業者(ファクタリング業者)の譲渡・売却する方法になります。

たとえば、未払いの100万円があったとします。この100万円の債権を業者に譲り渡し、その譲渡金を受け取るのがファクタリングの基本的な方法です。

ファクタリングは支払いまで間がある土木工事の債権や診療報酬債権、フリーランスの報酬など、さまざまな分野で使われています。

債権を督促などで回収するという方法もありますが、早い時点でファクタリングを使って換金するという対処法もあります。

自分で債権回収しない方がいいケース

債権回収は督促や少額訴訟など、自分で対処することも可能です。

ただ、債権回収のケースによっては自分で対処することはおすすめできないケースがあります。

自分での債権回収をおすすめできないのは次のようなケースです。

相手が支払いに応じそうにないケース

自分で債権回収するのではなく弁護士などの士業に任せたいケースとしては、「債務者(相手)が支払いに応じそうにないケースがあります。

たとえば、債務者に何度も何度も電話やメールで「支払ってくれ」と伝えていたとします。しかし、債務者側は「来月になればお金が出るから」「その日にお金を取りに来られてもいないから」と支払いに応じてくれません。

  • 相手がのらりくらりと言い逃れをして、督促だけでは支払ってくれない(回収できない可能性が高い)
  • 相手がメールや電話での督促を逆手に取って、「脅迫だ」「脅しだ」と言ってくる
  • 相手が強固に「支払いなどない(お金など借りていない)」と言い張っている
  • メールで電話での督促や内容証明郵便など手を尽くしたが、現在相手から債権回収できていない
  • 連絡先に確かに相手が住んでいるのだが、相手が徹底的に無視する

このようなケースでは自分での債権回収は難しいと言えます。

相手からスムーズに回収するため、そして相手とトラブルにならないためにも、弁護士などの士業に回収をお願いした方が安心です。

債権回収の方法を要検討したいケース

債権回収にどのような方法を使うべきか要検討したいケースでも弁護士などの士業に相談することをおすすめします。

電話やメールなどで債権回収を頑張っても、お金を支払ってもらえないことも少なくありません。電話やメールなどの債権回収が不発で終わったとなれば、次にどの方法で対処するかが問題です。

ただ、「どの方法で債権回収するか」が問題になります。債権回収の方法には訴訟や調停、裁判所による支払督促など、さまざまな方法があるからです。

債権をどの方法で回収するか。すでに督促を試したが失敗しており、別の方法を検討したい。どの方法が効率的な。このように債権回収の方法を要検討したい際は、弁護士などの士業に「どの方法がおすすめですか?」「次にどの方法で対処すべきか?」と相談することをおすすめします。

債権額が多いケース

自分で債権回収するのではなく弁護士などの士業に相談したいケースは、債権額が多いケースです。

たとえば債権の金額が3桁万円の後半や1,000万円超えの場合、回収できないとなると、個人事業主やフリーランスの仕事に大損害です。債権回収の成功・失敗で今後の仕事だけでなく生活まで左右されると言えるでしょう。

こういった「失敗できない」「債権額が大きい」債権回収ケースでは、弁護士などの専門家を頼った方が安心です。自分で債権回収に乗り出して失敗したら大変だからです。

裁判など裁判所を使いたいケース

債権回収では電話やメールの督促で回収できることも少なくありませんが、中には支払いの拒絶や支払いトラブルにより裁判などでの債権回収に乗り出すケースもあります。

裁判や調停で債権回収する場合、専門的な法的知識と実務知識が必要です。加えて、裁判や調停をする前に、「裁判所を使って債権回収する場合、費用面でマイナスにならないか」を判断しなければいけません。

専門的な知識と実務経験を必要とする裁判や調停で債権回収するケース。裁判や調停で債権回収する際に費用面でマイナスにならないか判断しなければならないケース。こういったケースでは、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

債務者の金銭事情が悪化しそうなケース

債権回収に手間取っていると、債務者の金銭事情が悪化することがあります。

たとえば支払いの相手も事業者だった場合、のらりくらりと言い逃れされている間に相手の懐事情が悪くなってあっという間に倒産といったケースも実際にあるわけです。

「支払ってもらえないうちに懐事情が悪くなるかもしれない」「急いで回収した方がいい」と考える場合は自分で債権回収するよりも弁護士などのプロを頼った方がスムーズです。

弁護士など士業の名前を使いたいケース

債権の回収で内容証明郵便を使うときは、弁護士などの士業から出してもらうと、その士業名・資格・事務所名が入ります。そうすると、受け取った側は「弁護士が出てきた!」と驚くと共に、「ここで支払わなければ、相手は裁判を起こすかもしれない」「もう逃げられない」と怖くなります。

個人で督促をしても支払いに応じない債務者でも、弁護士が督促したらあっさり支払った。このようなケースは珍しくありません。

弁護士など士業の名前入りで内容証明郵便を出してもらいたいケースや士業の名前で相手にプレッシャーを与えたいケースではプロへの相談がおすすめです。

困ったときは弁護士など専門家に相談しよう|まとめ

自分でできる基本的な債権回収方法と、債権回収を弁護士などのプロに相談した方がいいケースをご紹介しました。

債権回収は自分でもできますが、ある一定のラインを超えたときは弁護士など士業への相談がおすすめです。一定のラインとは、

  • 相手に支払い意思が見られない
  • 逃げる気まんまんである
  • 個人だと思って(強気に出られないだろう)と甘く見ている
  • 督促も内容証明郵便も効果がなかった
  • むしろ「脅しだ」と言いがかりをつけられている

などのケースです。

債権回収が難しそうなケースや士業の名前を使いたいケース、トラブルになりそうなケース、裁判所を使いたいケースでは、基本的に弁護士などプロへの相談をおすすめします。