経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは?2024年の改正内容も含めて解説

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は取引先の倒産によるリスク/ダメージを軽減できる支援制度です。この経営セーフティ共済が2024年10月に改正されました。

経営セーフティ共済とはどのような支援制度なのか、そしてどのような内容が改正されたのか、分かりやすく解説して行きます。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは?

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは、取引先が倒産したときに連鎖倒産や回復の難しいダメージを負わずに済むよう制定された中小企業の支援制度のことです。

中小企業の取引では、よく連鎖倒産が起こります。たとえば中小企業であるA社が倒産したとします。A社と取引していたB社は取引代金を回収できませんでした。取引代金の額が大きかったため、B社は今後の事業や他社への支払いが難しくなり、A社に引きずられるかたちで倒産しました。

B社が倒産した影響で、B社が最も大口の取引先であったC社も倒産しました。これはあくまで一例ですが、中小企業の取引ではこのような連鎖倒産ケースが少なくありません。

中小企業の倒産が他社に及ぼす影響をおさえるために作られたのが、この「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」です。

経営セーフティ共済は中小企業基盤整備機構が運営している支援制度で、取引先などが倒産したときに共済金の借り入れが可能になっています。

取引先が倒産して「自社に影響がある」「自社も倒産しそうだ」「お金が必要だ」というときに自社を守るために使える支援制度が経営セーフティ共済です。

https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の概要について

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の支援制度内容についてもう少し詳しく説明します。

セーフティ共済は取引先の倒産などの際に共済金の借り入れが可能な支援制度であり、具体的な借入可能額・支援内容は次のようになっています。

共済の借入可能額 掛け金の最大10倍(上限8,000万円)

「回収困難となった売掛金債権等の額」か「掛け金の最大10倍(上限8,000万円)」のいずれか少ない方の金額

加入できる人、組織 1.     個人事業主

2.     中小企業

3.     企業組合

4.     協業組合(一部)

いずれも1年以上の事業継続が必要

なお、中小企業は業種ごとの従業員数/資本金/出資額などの条件がある

保証の要否 無保証、無担保
掛け金の額 5,000円~20万円で自由に選べ、増減可能
経営セーフティ共済を利用できるケース 1.     取引先の法的整理、私的整理、取引停止処分(でんさいネット含む)

2.     災害の影響で小切手や手形が不渡りになった(でんさいネットの電子記録債権含む)

3.     特定非常災害の影響で支払い不能になった

経営セーフティ共済を利用できないケース 取引先の夜逃げによる倒産
その他、補足 1.     掛け金や損金は必要経費に算入可能

2.     解約手当金の受け取りが可能(掛け金を12カ月払っていた場合、解約手当金は12カ月以上で8割、40カ月以上で全額)

このように、中小企業にとって大きな痛手である取引先の倒産の際にセーフティとなる支援制度になっています。

個人事業主も使える支援制度なので、「うちは法人じゃないから」と考えず、利用を検討してみた方が良いでしょう。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の変更ポイント改正の理由

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の2024年10月の変更には理由があります。

理由と変更されたポイントについて説明します。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)が改正された理由

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は2024年10月に改正されました。

今回の改正の理由は「不当に共済に加入し、解約する者を防ぐため」「本来の使われ方とズレた使われ方を防ぐため」です。

経営セーフティ共済の掛け金は経費に計上できるなど、税金上のメリットがあります。そのため、節税対策のために経営セーフティ共済に加入する個人事業主などが相次いでしまったのです。

節税したい期間だけ加入し、解約手当金を満額受け取れる期間がきたら解約する。

このような使われ方が横行するようになりました。

短期間での加入と解約を繰り返されると、取引先の倒産で困っている個人事業主や中小企業のための事務手続きも遅れてしまいます。また、共済側の労力も増してしまうことでしょう。それに、本来は連鎖倒産などを防ぐためのセーフティが目的で作られた支援制度なので、すっかり節税のために使われるようになってしまい、本末転倒感がありました。

本来の使い方とはズレた目的で加入/解約を繰り返す個人事業主などが増えてしまったため、改正されたという背景があります。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の変更ポイント

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の変更点は、今まで解約後にもすぐにできていた損金算入が制限されるという点です。

経営セーフティ共済を解約してもすぐに再加入しても、掛け金を2年間は損金として計上できないという制限が設けられました。

節税のために経営セーフティ共済を利用しにくいように変更されたかたちです。

まとめ|2024年10月以降に加入してもメリットはある

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の概要や2024年の変更点についてまとめました。

2024年10月に経営セーフティ共済の改正が行われた背景は「主に節税など本来の主旨と違った利用が増えたから、その防止のため」です。支援制度の中身自体はほぼ変わっていません。また、経営セーフティ共済の税制優遇自体がなくなるわけではありませんので、今後も加入にはメリットがあります。

・節税目的に利用に制約ができたものの、掛け金の税制優遇が消えたわけではない

・個人事業主や中小企業は取引先の倒産対策(セーフティ)として使える

・節税といざというときのセーフティを兼ねた方法として有効活用できる

内容に変更はありましたが、経営セーフティ共済のメリット自体はなくなりません。今後もセーフティ+節税の方法として使えます。ただし、変更点もしっかりおさえた上で使うことが重要です。