公正証書ってなに?どんな時に使うの?行政書士が簡単に解説

離婚などの法律記事やニュースを見ているとよく「公正証書」という言葉が出てきます。ただ、公正証書は日常的にあまり馴染のない方も多いと思いますので、「公正証書を作った方がいい」と言われても、

何それ?

と思ってしまうのではないでしょうか。

私の周囲で実際にあった話ですが、公正証書がどのような書類か分からず「自分で作れるものか」「書式は?」「作り方は?」など、基本的なポイントを即座に検索したのだそうです。そこではじめて公正証書の存在を知ったそうです。

金融や法律などの仕事をしている方にとっては一般的な公正証書でも、馴染のない方の認知度は 何それ? かもしれないですね。

今回の記事では 公正証書って何? という基本的な質問に行政書士が答えます。

ただ、法的な難しい話はまったく出てきませんので、知識を深めるための簡単な読み物くらいの感覚で楽しんでいただければと思います。

公正証書とは公証人が作成する強い力を持った書類

まずは公正証書とはどのような書類なのか説明します。

また、公正証書の作成に関わる公証役場や公証人に関しても簡単に説明して行きます。

公正証書とは?

公正証書とは、公証人が第三者の立場から作成に関与する書類のことです。

公正証書は公文書の一種になっています。公文書とは、公務員などが権限や職務などに基づいて作成する書類のことです。

公証人とは?

公証人とは、公証役場に在籍する公務員のことです。

公証人は個人や法人などの相談に応じて公正証書を作成します。

また、「これから公証役場を利用したい」「公正証書の作成を考えている」というときに相談に乗ってくれる法律のプロでもあります。

公正証書を作成したいときは公証人に相談可能です。

相談は無料になっています。

公正証書の作成など公証人の法的サービスを受けるためには

公証役場には公式のYouTubeチャンネルもあります。

「公証人ってなに?」という基本的なポイントから動画で説明していますので、ぜひチェックしてみてください。

公証役場とは?

公証役場とは、法務省の管轄する役場の一種です。

公証役場は公正証書の作成などを行っており、全国各地にあります。

お住いの地域の公証役場については、公証役場のホームページで検索可能です。

公証役場一覧

公証役場と自治体の役場は同じ?

公証役場には「役場」という言葉がついています。また、公的な機関でもありますので、「役場なら自治体の一部ではないか」と勘違いする方もいらっしゃるようです。実際、公正証書のことを尋ねるために自治体の役場に足を運ぶ方もいらっしゃるという話でした。

公証役場には「役場」という名前がついていますが、自治体の役場とは一切関係ありません。公証役場は役所の一種ではありますが、役場とは別の仕事をしており、組織としても別です。各自治体の役場とは関係ありませんので、注意してください。

したがって、

・自治体の役場に相談すべきことを公証役場に相談する

・公正証書の作成など公証役場が対応していることを自治体の役場に相談する

ということはできません。

併せて注意が必要です。

公正証書と私文書の違い

公正証書は公証役場という公的な機関とそこに在籍する公証人が作成に関与します。対して私文書は個人で作れる書類です。公証役場で作る書類が公正証書で、自分など個人で作る(作った)書類が私文書です。

公的な公証役場が作成に関わった書類。自分で好きに作成できてしまう私文書。前者の方が証拠としての力も強くなっています。

・役場/役所が作る公的で力の強い文書

・私的に作る文書

の違いです。

公正証書の特徴とは?メリットやデメリットなど

公正証書にはメリットとデメリットがあります。

また、文書としての特徴もありますので、併せて説明します。

公正証書の特徴とは?

公正証書には2つの特徴があります。

1.公的な組織である公証役場、そして公証人が作成する

2.公正証書は強い証拠、証明の力を持っている

たとえば、AとBがお金の貸し借りの約束をしたとします。AとBは「確かにお金に借りた」「借りたいお金を返す」ことの証明として書類を作りました。

AとBが作った文書が個人的に作成した文書であれば、「いつでも捏造できる」「本当にふたり合意の上で作成したのか?」「内容は本当か?」などの疑義が生まれ、さらにトラブルの元になるかもしれません。私的にいつでもパソコンなどで作成できる文書だからこそ、証拠や証明としての力も弱いものだと言えるでしょう。

AとBがお金の貸し借りについて公正証書を作成したらどうでしょう。第三者視点で見ても「公証役場(公証人)が関与しているのだから、事実だろう」「公正証書なのだから、勝手に個人では作成できない」と思うはずです。私的に作成する文書より証拠としての力も、証明としての力も強いのが公正証書です。

公正証書のメリットとは?

公正証書のメリットは4つあります。

1.証拠としての力が強い

2.文書として残したい内容を忘れずに盛り込める

3.公正証書の内容と文言によっては強制執行に使える

4.心理的圧迫を与えられる

公正証書のメリットと言えば、何といっても証拠としての力の強さです。公的な場での力の強さはもちろんですが、私的な場面で「これが証拠です」と出したときも力を発揮します。

仮に個人で作った私文書と公正証書「どちらを信用する?」と言われたら、やはり公証人が関与する公正証書の方を「こっち」と言う人がほとんどでしょう。

証拠としてしっかり残したいときは、こうした公正証書のメリットを活かすべきです。

また、公正証書は内容と文言次第では強制執行にも使えてしまうという特徴があります。

強い証拠としての力。それに、「いざというときは強制執行されるかもしれない」という文言、内容。公正証書を作っておくと相手に心理的圧迫を与えられ、約束を破られにくいというメリットもあります。

ただ、こうしたメリットを活かすためには、公正証書の作成を得意としている士業などに相談することをおすすめします。自分で公正証書を作成しようとすると、文言選びを失敗したり、盛り込みたかった内容をしっかり盛り込めていなかったり、公正証書のせっかくのメリットを活かせなかったりするのです。

公正証書を作成したいときは行政書士や弁護士などに相談し、あらためて公正証書のメリットを説明してもらうことをおすすめします。その上で、作りたい内容やニーズに合わせた公正証書作成をサポートしてもらうと安心です。

公正証書のデメリットとは?

公正証書のデメリットは3つあります。

1.作るときにお金(手数料)がかかる

2.訂正や取り消しが大変

3.個人で作るときに困りがち

公正証書を作成するときは公証役場に手数料を支払わなければいけません。お金がかかってしまうというデメリットがあります。

また、公正証書として作成すると、後から「やっぱり内容を修正したい」「一部を取り消したい」となったときに大変です。加えて、一般の人は普段あまり公正証書を作りませんし、公証役場も利用しません。いざ公正証書を作成しようとなっても、「公証役場の利用方法が分からない」など、困ってしまう可能性があります。

公正証書の作成は行政書士にも依頼できます。困ったときは相談してみると良いでしょう。

公正証書はどんなときに使われる書類なの?

公正証書は遺言書や契約書などに広く使われています。

・公正証書で遺言書を作成したい(公正証書遺言の作成)

・賃貸借契約の契約書を公正証書で作成する

・公正証書で遺産分割協議書を作成する

・離婚時の取り決めを公正証書にする

・お金の貸し借りの契約書を公正証書で作成する

・任意後見の契約書を公正証書で作成する  など

遺言書や契約書など「力のある書面として残しておきたい約束(契約)、内容」などに、主に公正証書が使われます。この他に公証役場では、法人設立時の定款認証なども行っています。

公正証書を作りたい!どこで作れるの?作り方は?

公正証書は各自治体にある公証役場で作れます。

各自治体の公証役場の場所はホームページで確認可能です。

公証役場一覧

公正証書を作成するときは、公証役場(公証人)とやり取りしながら作成します。

作成時に分からないことなどがあれば、公証人に相談できます。

なお、作成する文書によって手数料がかかりますので、注意してください。

手数料については公証役場のホームページで確認可能です。

12 手数料

まとめ|公正証書の基本は知っておくと役に立つ!

公正証書は日常生活ではあまり使うことがありません。ただ、離婚や相続のときに公正証書が関係してくることがありますので、名前や特徴を大体おさえておくと知識として役立ちます。

公正証書を使いこなすためには法律の知識も必要になりますから、詳しく理解しておく必要はありません。

(必要なときに士業に相談すれば問題なしです!)

ただ「公正証書か。そういえば、証拠としての力が強いんだったか」と、記憶の片隅に置いて、役立てていただければと思います。