確定申告で給与や生活費は経費になる?消費税申告との違いは?新米個人事業主の疑問

新米個人事業主の皆さんも、2024年3月の半ばには確定申告を終えていることでしょう。新米個人事業主の方の中には「消費税申告も余裕で終わらせました」という方もいらっしゃるかもしれません。また、確定申告を終わらせた後に今度は「消費税申告が終わらず困っている」という方も、いらっしゃることでしょう。

確定申告と言えば、仕事に関係する出費を経費として計上可能です。ただ、新米個人事業主の場合「どこまでの出費を経費にできるのか悩む」というケースも少なくありません。実は、個人事業主として長年やって来ている方の多くも、経費については悩むことが多いのです。なぜなら、「経費にできる」「経費にできない」の境界線は曖昧で、経費として認められる場合もあれば、「駄目」と言われてしまう場合もあるからです。法律などで厳格に認められていないからこそ難しいというわけですね。

この記事では、はじめての確定申告を終えた個人事業主、あるいは2025年にはじめて確定申告することになる個人事業主向けに、

・確定申告とは?

・生活費や給与は経費として認められる?(経費の単純な考え方)

の2つをご紹介します。

この2つの覚えておくだけで確定申告がかなりやりやすくなりますので、この記事でぜひ基礎的なポイントをおさえて行ってください。

確定申告とは?消費税申告と所得の申告の違いなど

個人事業主は経営歴が長いか新米かどうかに関わらず、確定申告(税金の申告手続き)を毎年行わなければいけません。

確定申告は前の年の税金を申告する手続きなので、2024年から個人事業主をはじめた方は、2025年に所得税や消費税などの申告手続きを行います。2025年に個人事業主をはじめた方は、2026年に前の年の売上・経費・税金などを計算して税務署に申告することになります。

なお、所得税と消費税の申告はそれぞれ手続きの意味と期間が違っていますので、注意してください。

所得税の確定申告

所得税の確定申告とは、前年の所得・売上・経費を計算し、申告書の提出をする手続きです。計算した結果、税金を納めなければならないケースでは所得税などの納付し、税金を納め過ぎている場合は還付される仕組みになっています。

所得税の確定申告は、毎年2月16日から3月15日までです。この期間内に個人事業主は売上や経費などをしっかり計算して、申告書を提出しなければいけません。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2023/01/1_01.htm

消費税の申告

消費税の申告とは、前年の売上や仕入れに関する消費税を計算し申告・納付する手続きのことです。

消費税申告の期間は所得税の申告期間とややズレており、課税期間の翌年の3月31日までになっています。たとえば2024年の消費税申告をする場合、2024年1月1日~12月31日までの分を翌年の3月31日まで申告するわけです。

所得税と消費税の申告の違い

消費税申告と所得税の申告では4つのポイントが違います。

・申告に使う書類が異なる

・計算方法も違う

・申告の期間も違っている

・申告を要する人と不要な人も違う

そもそも消費税申告と所得税の申告では、申告対象になる税金が違っています。税金が違うということは、計算方法なども異なるということです。すでにお話ししたように所得税の申告と消費税申告では期間にも違いがあるため、新米個人事業主は注意する必要があります。

経費とは?生活費や給与は経費として認められる?

所得税の申告で特に問題になるのは経費です。

所得税の申告では「仕事に関する出費」は経費として差し引ける仕組みになっています。

たとえば個人事業主の売上が500万円で、経費が100万円だったとします。売上500万円と経費100万円だけで単純計算すると、白色申告では税金が100万円を超え、青色申告では80万円ほどになってしまうのです。

では、同じ500万円の売上で経費が300万円だったらどうでしょう。この場合に単純計算すると、青色申告での税金は28万円、白色申告では44万円になります。

これはあくまで売上と経費だけの計算なので、控除などを使って税金額とはかなり違ってくるのですが、それでも、経費の金額(経費をどれだけ計上するか)によって税金がかなり変わってくることは分かっていただけるはずです。

経費は計上すれば計上するほど税金の負担が軽くなるため、「この支出は経費になる?」など問題になるわけです。

生活費は経費として認められるのか

個人事業主は経費をどんどん計上する方が税金面の負担が減ってお得になります。しかしながら、何でも経費として認められるわけではありません。経費として認められるのは「仕事と関係のある支出」です。

たとえば、仕事のために機材や事務用品を買ったとします。このような出費は原則的に経費になります。

では、本を買った場合はどうかと言うと、これは「仕事と関係あるのか?」によって判断される仕組みです。仕事に使う本、あるいは個人の趣味で購入しても最終的に仕事に使うことになった本であれば、経費として認められる可能性があります。

仕事の休憩中に読む漫画本は一見すると仕事と関係ありそうですが、あくまで休憩中のものであり、仕事と直接的に関係ありませんよね。このような本の購入費用は原則的に経費にできませんので注意してください。

生活費についても同じで、仕事に関係のある出費であれば、経費として認められる可能性があります。たとえば自宅を事務所にしており、仕事中にも水道・ガス・電気代の負担が発生するとします。加えて、自宅は賃貸でした。このようなケースでは自宅の賃料や水道・ガス・電気の費用は仕事と関係ありますから、一部を経費として計上可能です。

ただ、自宅で仕事をしている場合は、賃料・光熱費などは仕事の出費であると同時に、仕事の関係のない生活費でもあります。仕事分と生活費分(仕事と関係のない分)に分けて、仕事分だけを経費にできます。この考え方を家事按分と言います。

原則的に生活費は経費にはできませんが、家事按分は可能です。自宅で仕事をしているからと言って食費や趣味の費用などをどんどん経費にすると怒られますので、注意してください。

給与は経費として認められるのか

個人事業主の収入は自分の給与に等しいのではないかという考え方があります。個人事業主は会社から給与をもらっているわけではありません。自身の事業の収入がある種の給与になるのではないかという考え方です。仮に個人事業主自身の給与(自分の取り分)を経費に計上できるのであれば、かなり税金の負担を軽くすることができるはずです。個人事業主の取り分を給与と考え、経費に計上できるのでしょうか?

これについては「できません」。

なぜなら、個人事業主には給与という概念がないからです。個人事業主自身の取り分=給与になるわけではなく、あくまで必要な支出・納税額などを差し引いた金額になるだけで、その部分が会社から受け取るような給与という概念のお金になるわけではないのです。

したがって、必要な支出・税金などを差し引いた分を「給与だから」と経費に計上することは認められていません。

最後に|基本をおさえるだけで情報も調べやすくなる

新米個人事業主が知っておきたい確定申告や経費の基本中の基本の話をしました。

確定申告の際は分からないことが多く出てきますが、基本中の基本を知らないままに調べはじめると混乱します。また、消費税と所得税の申告は異なると言った初歩を知らずに情報に触れると「自分が何を調べているのか、調べたいのかすらよく分からない」という状態になってしまうのです。

まずはこの記事で説明した基本中の基本をおさえ、そこから知識を発展させてください。