債権回収やクーリング・オフの際に「内容証明郵便」という言葉を見かけることは多いはずです。
内容証明は日本郵政のサービスのひとつ。内容証明郵便という名前自体は知っていても「具体的にどのようなときに使うサービスなのか?」と疑問を覚える方が多いようです。
行政書士である私も周囲の人たち(not 士業)に聞いて回りましたが、意外と「そう言えば使ったことがないな」「名前は聞いたことがあるが、どのようなときに使うものなのかよく分からない」という人が多かったです。
そこでこの記事では、
- 内容証明郵便とは?
- 内容証明郵便はどのようなときに使うのか?
の2点に絞り、基本中の基本を徹底解説します。
ご自身での債権回収を考えている方や、名前だけ知っているという方の参考になればと思います。
目次
内容証明郵便とは?サービス内容やメリットなど
まずは内容証明郵便のサービス内容やメリット、注意点などを順番に説明していきます。
内容証明郵便とは「内容を証明してもらえる手紙」である
内容証明郵便とは、日本郵政が「内容を保存し、どのような内容の手紙をいつ誰に出したか証明してくれるサービス」です。
たとえば、債権回収のためにAさんに「未払いになっていること」や「お忘れではないですか」「今後も払っていただけないなら法的措置も検討します」と伝えたい(督促したい)とします。
通常の手紙では、郵便局は内容をチェックしませんし、当然ながら記録は残りません。記録を残す方法は、せいぜいが、出す側が手紙のコピーを取っておくことくらいでしょう。Aさんは「そんな手紙は受け取っていない」「そんな内容は書いていなかった(督促ではなかった)」とウソをつくかもしれません。
内容証明郵便でこの手紙を送ると、Aさんに送った手紙の内容が日本郵政側に記録されます。また、Aさんに送ったこと、送った日付なども記録されますので、Aさんは「受け取っていない」「内容が違っていた」と言い逃れできなくなります。
日本郵政(郵便局)に内容や手紙を送ったこと、いつ送ったかなどが記録されるサービスが「内容証明郵便」です。
内容証明郵便は弁護士や行政書士などの士業だけでなく、一般の方も利用できるサービスです。
https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/index.html
内容証明郵便を使うメリットとは?
内容証明郵便には4つのメリットがあります。
- 相手を言い逃れできなくする
- 証拠作りができる
- 相手に心理的なプレッシャーを与えられる
言い逃れを封じるメリットと証拠作りのメリット
内容証明郵便のメリットは、何と言っても受け取った相手の逃げを封じられることです。
相手が受け取り拒否しようがどのような手紙を送ったかが記録されますので「送っていないのでは?」といった言い逃れも封じられるのが内容証明郵便のメリットになります。加えて、確かにその内容で送ったことを日本郵政側が証明してくれますので、証拠作りにも使えるわけです。
心理的なプレッシャーを与えられるメリット
内容証明郵便には相手に心理的なプレッシャーを与えられるというメリットもあります。
内容証明郵便はよく法的対処の前段階として使われます。そうでなくても、普通の手紙ではなく内容証明郵便が送られてくると、受け取った相手は「普通の手紙じゃない」と驚くことでしょう。
これから法的対処されるかもしれない。解決のために本格的に動き出した。こういった本気度が伝わり、精神的なプレッシャーを感じます。お金を借りていて口で「返して」と言っても応じなかった人でも、内容証明郵便が届くと「やばいかもしれない」「大事になるかも」と思って急に返済するようなケースがあります。
また、後述しますが、内容証明郵便は弁護士などの士業に送ってもらうことも可能です。この場合、内容証明郵便には士業の名前は資格、事務所名が入りますので、受け取った相手に、さらにプレッシャーを与えられるというメリットがあります。
内容証明郵便には注意点もある
内容証明郵便には注意点もあります。
- 利用にお金がかかる
- 規格が決まっている
- 内容が記録される
内容証明郵便などの郵便サービスを利用するためにはお金がかかります。内容証明郵便に関しては普通郵便より高い料金設定になりますので、利用時は日本郵政側が定めた所定の手数料を負担しなければいけません。
また、内容証明郵便は規格が決まっています。規格に沿った手紙しか内容証明郵便として送付できませんので注意してください。
内容証明郵便はこちらが送った内容が記録されるため、「相手の言い逃れを封じる」「証拠になる」というメリットがあります。ただ、このメリットは逆に考えるとデメリットになる可能性もあります。
手紙に脅迫や暴言を書くと、当然ながらそれも記録として残るわけです。また、手紙を送った側にとって証拠になるということは、受け取った側にとっても証拠になるということです。だからこそ、督促などで使う際は文言を選び、慎重に使う必要があります。
内容証明郵便はどのようなときに使うのか?債権回収など
内容証明郵便はそのメリットからよく「確かに送ったと証拠作りをしたいとき」に使われます。
具体的には次のようなケースでよく使われます。
債権を回収したいケース
内容証明郵便はよく「未払いのお金を回収したいとき」に使われます。
証拠の残る内容証明郵便で相手に「返済がまだです」「法的措置を取りますよ」と督促するわけです。
債権回収・未払い金の回収にはさまざまなケースがあります。
こういったケースではよく内容証明郵便が使われています。
- お金を貸したのにのらりくらりと言い逃れして返してくれない
- 未払いや確かに督促したということの証拠作りがしたい
- 給料や報酬の未払いがある
- 取り引きの代金を支払ってくれない など
契約の催告や解約通知を出したいケース
内容証明郵便は契約の催告や解約通知にもよく使われます。
たとえばAと契約を結んだのに、Aは契約内容をまったく守ってくれません。契約違反です。このようなケースではAに対して「契約違反です」と通知するわけです。
また、Bと契約を結んでいましたが、この度、解約することになりました。こういったケースでも「解約します」と記録に残るかたちで通知します。
契約の催告や解約の証拠を残すこと、通知することに、内容証明郵便はよく使われています。
クーリング・オフしたいケース
クーリング・オフという制度があります。
クーリング・オフとは、一定の期間内であれば契約の解除や申し込みの撤回ができる制度のことです。
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html
クーリング・オフは書面(電磁的記録でも可)で行います。
内容証明郵便は書面であり、確かにクーリング・オフを申し込んだと記録から分かるわけです。そのため、よくクーリング・オフに使われます。
慰謝料の請求をしたいケース
交通事故の被害者や名誉棄損の被害者は加害者に対して慰謝料を請求することがあります。
加害者に慰謝料を請求するときも内容証明郵便がよく使われます。
時効を止めたいケース
内容証明郵便は借金などの時効完成を阻止したいときにもよく使われます。
時効完成を止めるために内容証明郵便を使いたい場合、法的な知識や実務の知識が必要です。
弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
内容証明郵便が向かないケースもある
内容証明郵便の利用が向かないケースもあります。
以下のようなケースは、内容証明郵便は向きません。
普通の手紙や季節の挨拶であるケース
普通の手紙や季節の挨拶は内容証明郵便に向きません。
と言うより、普通の手紙の場合は内容証明郵便にする意味がないと言えるでしょう。
年賀状や暑中見舞い、寒中見舞い、友人同士の手軽な手紙などに内容証明郵便を使うことはまずありません。
相手の住所や所在が分からないケース
内容証明郵便は手紙の一種です。
したがって、相手の住所・所在地自体が分からないと内容証明郵便は送れません。
相手が普通に支払いそうなケース
たとえば普段しっかり払ってくれている人が1日だけ支払いに遅れてしまったとします。
このようなケースでは、支払いの日付を勘違いしていることや、日付を間違えてしまっていることも少なくありません。また、ただ単に忘れてしまっているケースもあります。電話やメールで連絡すると「勘違いしていた。申し訳ない!」「すぐに支払う」で終わります。
相手が普通に支払いをしそうなケースでは、内容証明郵便はほぼ使われません。逆に考えると、相手が支払ってくれないケースや支払いでこじれそうなケースでは内容証明郵便が有効だということです。
人間関係を壊したくないケース
内容証明郵便を相手に送ると、その相手はやはりプレッシャーを感じますし、「法的手段を使っても解決しようと考えているのだろう」とも思います。あまり良い気分ではないと言えるでしょう。
仮に債権回収の相手が親族や友人だと、人間関係が壊れてしまう可能性があります。
人間関係をどうしても壊したくないという場合は、内容証明郵便の利用を控えることがあります。
内容証明郵便は債権回収など内容を「証明」したいときに使う|最後に
内容証明郵便は日本郵政(郵便局)のサービスで、「内容や確かに送ったことを(日本郵政に)証明してもらいたいとき」に使います。よく使われるのは債権回収や慰謝料の請求、契約の催告や解除、クーリング・オフなどです。
内容証明郵便は郵便局に行けば一般の方でも出せるのですが「文面をどうしたらいいのかよく分からない」「規格が難しい」「証拠として残るから、不利にならない文言を使いたい」と悩む方は少なくありません。
内容証明郵便は弁護士や行政書士などの士業に依頼可能です。
士業は債権回収の内容証明郵便のテンプレートなども作成していることが多いので、「未払いで困っている」「個人事業主だが、督促のためのテンプレートが欲しい」「文面や出し方のコツを教えて欲しい」という場合は、弁護士や行政書士などに士業に相談することをおすすめします。