個人事業主として仕事をするときのよくあるお悩みに資金調達があります。
仕事をするにも機器や設備が必要です。会社が新しい事業に乗り出すときは会社側が融資や今までのプール分を資金にしますが、個人事業主の場合は会社のような資金準備・資金調達は難しいことでしょう。特に士業といった資格を使った仕事や、会社を辞めての独立開業などでは「仕事をはじめるときの資金をどのように準備するか」が問題になります。
この記事では独立開業した行政書士が個人事業主の資金調達方法について解説します。これから資格で仕事をしようと考えている方や、独立開業を検討中の方はぜひ参考にしてください。
目次
資金調達方法には大きく分けて2つの種類がある
個人事業主の資金調達方法には大きく分けて2つの方法があります。
・自己資金を使う
・他所から資金調達する
自己資金を使う方法は、独立開業や新しい事業に合わせて自分でお金を準備する方法です。具体的には収入の積み立てや預金、自己資産の売却などを使った方法になります。あくまで「自分のお金・資産を使った方法」だと言えるでしょう。
他所から資金調達する方法とは、サービスや他者から借り入れる方法です。あるいは、他者が関係する権利や財産などを換金する方法になります。ローンや融資などが代表的な例です。
個人事業主が資金調達するときは自己資金と他所からの調達を併用、あるいはケースによって使い分けることになります。
この記事では主に他所から資金調達する方法について取り上げます。
個人事業主は融資などで資金調達できるのか
個人事業主が資金調達する際のよくある疑問に「個人事業主でも融資を使えるのか」というものがあります。
結論から言うと、個人事業主でも対象になっている融資であれば申し込むことは可能です。ただ、個人事業主が融資などに申し込む際は最低限、
・個人事業主の開業届を提出する
・確定申告をする
2つのポイントが重要です。
個人事業主は基本的に開業届を提出する必要がありますが、開業届を提出していなくても仕事をしてお金をもらうことは可能です。個人事業主としての実態をある程度証明するためにも開業届は提出しておきましょう。
また、融資などの借り入れの際は収支の状況をチェックされることも少なくないため、確定申告はしっかり行い、状況を目に見えるかたちにしておくことも重要です。
個人事業主が使える資金調達方法
個人事業主の資金調達方法と言えば融資やローンなどを想像するかもしれません。
ローンや融資は代表的な資金調達方法ではありますが、お金を工面する方法は何もそれだけではありません。他にもいろいろな資金調達方法があります。
・知人などからの借り入れ
・金融機関の融資
・日本政策金融公庫の融資
・ローン
・クレジットカードでの借り入れ
・ファクタリング
・その他の方法
個人事業主が使える資金調達の方法について、難易度なども含めて順番に解説して行きます。
方法①知人などからの借り入れ
個人事業主が仕事のためにお金を準備するときは、知人や親族など周囲の人から借りるという方法があります。個人で事業をしているからといって個人から借り入れをしてはいけないというルールはありません。周囲に貸してくれる知人や親族がいれば、借りて資金調達することも方法のひとつです。
ただ、個人は資金調達サービスを提供しているわけではないため、「お金がなくて貸せない」と言われてしまう可能性もあります。さらに、お金の貸し借りを嫌がられて「貸せない」と言われる可能性もあります。
お金の貸し借りが個人間トラブルに発展し、人間関係に亀裂を生じさせることは珍しくありません。身近な人間だからこそ「お金を貸してくれ」と言い難いと感じる方もいらっしゃることでしょう。
身近な人から資金調達する方法であり、トラブルに発展したときのリスクも怖いからこそ、難易度が高い方法と言えるかもしれません。また、余程の富裕層でもない限り、多額のお金を貸すことは難しいため、まとまった資金調達という点でも難しい方法です。
方法②金融機関の融資
個人事業主でも条件さえ当てはまっていれば金融機関の融資を利用できます。
ただ、融資を利用できることと実際に貸してくれるかどうかは別の話です。銀行などの金融機関はやはり「条件の良い人・会社に貸したい」「個人事業主は貸付先として不安である」と考えることも少なくないため、個人事業主という理由で断られることや、他の会社や事業主と比較された結果借り入れできないこと、審査落ちすることがあります。
銀行融資は事業や収支の状態、将来性、信用力、資金の使途などを厳しくチェックされるため、個人事業主の資産調達方法の中では難易度の高い方法のひとつです。会社のように融資してもらうことは難しいと考えるべきでしょう。融資実行まで2週間~1カ月ほど時間がかかる点も注意する必要があります。
方法③日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫でも融資を受け付けています。日本政策金融公庫の融資は個人事業主でも受けられるため、資金調達したい場合は検討しても良いでしょう。
日本政策金融公庫は創業融資も行っているため、起業間もない会社や個人事業主でも比較的優しい条件・審査で融資してくれます。ただし、日本政策金融公庫の融資にも審査があるため、必ず貸してくれるとは限りません。仮に融資してもらえる場合でも、融資実行まで時間がかかります。
方法④ローン
金融機関などでは融資以外にローンも扱っています。ローンの中には個人事業主が使えるビジネスローンがあります。ビジネスローンにも審査がありますが、審査さえパスすれば問題なく資金調達可能です。
個人事業主向けのローンは個人事業主の事情をよく理解しているため、融資が使えない個人事業主でも使える可能性があります。ただし、ローンである以上、借り入れ後に返済しなければいけません。借り入れ関係の資金調達方法の中では金利が高めに設定されていることが多いという点にも注意が必要です。
方法⑤クレジットカードでの借り入れ
クレジットカードには決済機能の他にキャッシング(借り入れ機能)も付属しています。キャッシング機能を使って個人事業主が資金調達することも可能です。
クレジットカードのキャッシング機能を利用する際は枠に注意が必要になります。枠には限度があるため、
その限度額までしか借りることはできません。当然ですが返済も必要です。金利も高めに設定されていることが多いため、この点においても注意が必要です。
方法⑥ファクタリング
個人事業主が使える資金調達方法にファクタリングがあります。
ファクタリングとは専門業者に債権を売却・譲渡することにより資金を得る方法です。債権の資金化とも言える方法がファクタリングになります。
個人事業主を使えるファクタリング会社もあるため、そういった会社に申し込むことで債権の資金化が可能です。
方法⑦その他
その他の方法としては、クラウドファンディングなどがあります。個人事業主が多くの人に資金提供を呼びかけ、サービスなどを使って広く資金集めする方法です。
ただ、クラウドファンディングの場合は「この商品を作りたい!」という明確な目的を提示して資金提供を呼びかけるのが基本です。事業資金を提供して欲しいというだけでは、クラウドファンディングでの資金調達は難しいと言えるでしょう。
クラウドファンディングで集めた資金は返済の必要がありません。しかし、事業で作成した商品やサービスなど、何らかの見返りを用意しているケースが少なくありません。広く大衆に資金提供を呼びかける資金調達方法なので、多くの人は見返りやしっかりした目的がないとお金を出してくれないからです。
最後に
個人事業主の資金調達について説明しました。
個人事業主でも資金調達に使えるサービスは多数あります。また、他所から資金調達する方法にも、融資やローンといった貸し借り、ファクタリングにより債権の換金など、いろいろなタイプがあります。事業規模や使いやすさなどに合わせて使い分けることがポイントです。