日本の円安が深刻化していると報じされています。
2024年4月10日には1ドル153円まで円安が進行し、「実に30年ぶりの水準だ」と大騒ぎになりました。円安は2024年の夏にいたっても続いており、生活や仕事に影響が出ている方も少なくないことでしょう。
円安は資産運用にも影響します。米ドルは外貨商品として代表的だからです。アメリカの債券や株式などに投資するときも米ドルが関わってきますし、利払いの際も当然ながら関係します。そのため、米ドル円安状況に喜んでいる方もいれば、反対に「投資しにくいな」と苦い思いをしている方もいらっしゃるはずです。
今回の記事では、資産運用の基礎知識として「円安のときにやってはいけないこと」をご紹介します。今回ご紹介する「円安時にやってはいけないこと」は「絶対にNG」というわけではありませんが、損したくないから、やる前に一呼吸「本当に今で良いのか?」を考えることを重要です。
目次
円安のときにやってはいけないこと!なぜ駄目なのか
円安のときにやってはいけないことは5つあります。
円安のときにやってはいけないのは、旅行や一部の金融商品への投資などです。
① 円安のときは海外旅行が高くなる!海外旅行はNG
円安のときにしてはいけないのは海外旅行です。海外旅行では外貨への両替や外貨での支払いが必要になります。また、海外旅行の費用も外貨換算になることがあります。
円安は日本円の価値が低くなり(日本円を多く持って行かれ)、米ドルなどの外貨の価値が高くなる現象です。円安のときに海外旅行をすると、円高のときより費用がかかってしまいます。
たとえば、1米ドルが100円だった場合、20万円で旅行できたとします。その後に円安が4割進行し、1米ドルが140円になってしまいました。この場合、1米ドルが100円のときに20万円でできた海外旅行が、140円になると4割高くなる計算です。20万円だった海外旅行が28万円出さないとできなくなってしまうわけです。
このように円安が進行しているときの海外旅行は負担・費用面で損になってしまうため、基本的にはあまりおすすめできません。
② 円安のときは海外からの商品購入も注意が必要
円安のときは海外から商品を購入する際も注意する必要があります。なぜなら、円安になると海外からの買い物が高くなってしまうからです。
たとえば、海外からハーブの香油を購入していたとします。香油は商品用ではなく、自宅で使う用でした。海外さんの香油が気に入っていたので、アメリカやオーストラリアなどから質の良いものを取り寄せていたのです。
日本向けの商品を扱っている海外企業/海外で商いをしている日本の方のホームページや商品ページは、日本円換算で商品の価格が記載されていることも少なくありません。ただ、日本円換算で記載されていても、円安の際は価格が高くなっていることが多いと言えます。
かつて1,000円前後で記載のあった商品が、円安が4割進行すると1,500円~2,000円の記載になっていることもあります。中には材料費や取引先との関係で、1,000円以上の価格上乗せがなされているようなケースも少なくありません。
円安の際は海外からの商品の取り寄せなどは、注意が必要です。可能な限り安く買いたいなら、為替相場をよくチェックしておきましょう。
③ 円安のときに外貨に両替すると損してしまう
生活などの関係で外貨が必要になった場合はどうしようもありませんが、急な用件や事情もないのに、円安のときに日本円を外貨に両替すると損します。
円安のときは1米ドルなど外貨に対して日本円の価値が下がっているため、1米ドルを得るために、円高のときより多くの日本円を出さなければならないのです。たとえば1米ドル100円のときと、円安が4割進行した1米ドル140円のときでは、後者の方が1米ドルを得るために出さなければならない日本円が多くなります。外貨への両替で損してしまうわけです。
円安のときに外貨への両替は損するため、特に急を要する事情がなければ、為替相場をよく見てタイミングを検討した方が良いでしょう。
④ 円安のときに一部の金融商品への投資は損失が出ることも
円安のときに控えたいのは米ドルなど外貨への投資です。
米ドルなどの債券に投資する場合、銘柄にもよりますが基本的な流れは「日本円で外貨を購入し」「それから債券に投資する」という流れになります。たとえば100万円を米ドルの債券に投資したい場合は、その100万円で必要なだけの米ドルを買って債券投資(お金を貸す)わけです。
米ドルなどの外貨の投資商品は日本の預金や債券よりも金利が高いため、分散投資のポートフォリオとしてよく選ばれています。実際に「外債を運用している」という方もいらっしゃることでしょう。外債など外貨の金融商品は金利が良い反面、投資の際のプロセス(日本円を外貨に換えて投資)の流れから、円安の際は金利を考えてもマイナスになってしまうリスクがあります。
⑤ 外貨の金融商品への追加投資なども一呼吸置く
すでに外債などに投資している場合、「金利が良いから追加で投資するか」というケースもあります。
たとえば100万円を米ドル債券に投資し、金利として日本円換算で3~4万円受け取っていたとします。日本の金利・預金・債券よりかなりリターンが多いわけですから、「じゃあ追加で投資するか」というケースも実際にあるわけです。
ただ、すでにお話ししたように、現在は円安で米ドルなど外貨が高くなっていますから、追加投資をするとせっかくプラスになっているものが、一気にマイナスになってしまう可能性があります。外貨商品への追加投資などは一呼吸おいて、よく考えた方が良いでしょう。
反対に円安にときにやっておきたいことは?
円安のときに控えたいのは海外旅行や外貨による投資などです。では反対に、円安のときにやっておきたいことは何でしょうか?
知り合いのFPさんに尋ねてみたところ、
・海外旅行の後に放置している外貨を日本円に換えておくこと
・一部の外貨を日本円に両替して預金としてプールしておくこと
だそうです。
① 海外旅行後に放置している米ドルなどを日本円に換えておく
海外旅行やホームステイなどの後に意外と放置しがちなのが外貨です。
少額の外貨であれば「日本円に換えるのが難しい」というケースもありますが、海外旅行を何度かしている方や短期留学、数回のホームステイなどを経験されている方の場合は、ほんのちょっとの端数の外貨が大量に放置されているケースも見受けられます。ある程度まとまった額の米ドルなどがあるのなら、この機会の日本円にしてはいかがでしょう。
ちょうど円安なので、外貨を日本円にするのにお得なタイミングです。
② 外貨の金融商品(あるいは受け取りの外貨利)を日本円に換えてプールする
外債の金利などを外貨でプールしている場合は、円安のタイミングで日本円に換えて預金としてプールしておくことも方法のひとつです。
たとえば、いずれ車の買い替えを検討していたとします。中古車を買うとしてもまとまった資金が必要です。プラスが出ているなら「あえて今日本円にしなくてもいいのではないか」と思うかもしれません。ですが、近いうちにまとまった資金が必要な用事・買い物などがあるなら、外貨商品の一部を日本円に換金して必要費用として日本円でプールしておいても良いかもしれません。
まとめ|FIREや資産運用では株価などの他に為替にも注意を
資産運用では株価や投資信託の価格などだけでなく、為替の状況にも注意が必要です。外貨の金融商品を所持していなくても、会社や世の中に為替が影響することを考えると、為替相場は資産運用全体に大きな影響を与えると言えるでしょう。
また、円安は海外からの買い物などにも影響を与えます。今後の為替相場は「まだ円安が続く」「円安傾向が長引く」とも予想されていますので、今後の資産運用や生活の参考にしたいものです。